StartupとLaw Firm (5)

TakeuchiNobuki Blog Leave a Comment

(5)Fee体系

Startupの方々がローファームに依頼するにあたって最も気にされる点、それリーガルフィーではないかと思います。

「日本の大手事務所は高い。アメリカのローファームは目が飛び出るくらい高い。」

そんな印象をお持ちの方、かなり多いのではないかと思います。

日本の大手事務所もアメリカのローファームも、基本的にタイムチャージベースで仕事の依頼を受けることには変わりないのですが、まず大きく違うのが時間あたりのレート。日本の大手事務所ですと、若手のアソシエイトが大体1時間あたり2万円前後からスタートし、キャリアを積むごとにレートが上がっていき、パートナークラスになれば、3万とか4万円とか5万円になります。

これに対して、米国のローファームは、やはり俄然高し。ファームにもよりますが、大手になれば、アソシエイトレベルで時間あたり$400~$500チャージすることも珍しくなく、パートナークラスになると$800から$1000、あるいはそれ以上をチャージすることもままあります。

それはそれで、それだけの価値があるといえる場合がほとんどだとは思うのですが、それにしても高いですよね。日本のローファームですら高いと感じる日本人(実際払う身になってみると分かりますが、ぶっちゃけ高いです。)、そして、そもそも論としてお金がないStartupの方々には、米国ローファームのリーガルフィーなんて、それこそ目からビームが出てしまうくらい高いと感じることでしょう。

524a4c_2bca7911e6ef471ea164a2be7366b839

…が、これは何も日本人に限ったことではありません。シリコンバレーのStartupだって、もちろんお金がありません。将来資金調達できる可能性は日本より高いのかもしれませんが、手元不如意な状況なわけです。

そんなStartupに継続的にリーガルサービスを提供しようとする以上、ローファーム側も、フィー体系を工夫し、Startupが利用しやすくする一方で、過度にローファーム側がリスクを背負い込まない形のフィーを提案しています。例えば:

 ディファーラル

Startup関連法務の初期費用の支払いを、最初の資金調達(50万ドルなど、一定の水準のもの)実行時まで猶予することがあります。ただし、リスクを抑えるべく、一定の金額(2万ドルや3万ドル)までリーガルサービスを提供したら、それ以降はリーガルサービスを提供しません。

株式の引受

Startupからフィーを回収できないリスクや、そのStartupの有望性等に応じて、ファウンダーが最初に株式を引き受けるのと同じ価格(通常は1株あたり0.00001ドルなどノミナルな額)で、ローファームも数%株式を引き受けさせてもらうことがあります。

デポジット

万が一の場合の実費等の支払に充当するため、委任を受ける段階で一定額のデポジット(例えば1000ドル)をお願いすることがあります。

日本人が思いつく「Startupが利用しやすくする」方法の典型であるフィーの割引は、あまり見かけません。これはおそらく、Startupからの依頼が膨大だからなのかなと思います。膨大な数のStartupにフィーの割引を提供したら、そのフィーがスタンダードになっちゃうかもしれないですからね。

また、フィーキャップも、特にStartup初期の法務関係ではあまり見かけません。もちろん、 フィーキャップで対応しているファームもあるのだろうとは思いますが、そもそも、キャップがあろうがあるまいが、お金がない以上は払えないですからね。そうであれば、払える段階になったときにこれまで提供したサービスの分は、通常通りしっかりと払ってもらうという方が、合理的なのかもしれません。

Startupからいただくリーガルフィーの体系には、色々と工夫の余地があるのだと思います。その工夫をするためには、Startup市場を正確に把握し、回収不能になるリスクと資金調達等に成功する可能性等を色々分析しながら考える必要があるのでしょうが、残念ながらこれ、多くの日本の弁護士の苦手分野です(苦笑)。でもStartupの支援をしようとする以上、避けては通れない道の1つだと思いますので、四苦八苦しながらやっていかねば!…と意気盛んになったり、「外注」という言葉が急に頭をもたげてみたり。。。

すいません、収拾がつかなくなりました(笑)。

ということで(?)、今日は金曜日、がんばっていきましょう!

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

Twitter で

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です