【ビザ】STEM-OPT延長の新ルール公表

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米国ビザに関して、少し動きがあったので、ご報告です。

OPT – これまでのルールの概要

米国で学生として滞在するために必要なビザは、Fビザです。

Fビザで米国の大学等に留学し、卒業すると、卒業後1年間、Fビザで習得した知識や技術を生かした仕事に就くことができます。これがOPT(Optional Practical Training ≒ 実務研修)と言われるものです。

例えば、筆者が米国のロースクールを卒業し、その後米国法律事務所で雇用されたのは、このFビザのOPTに基づいていました。

OPTの期間は、原則として、1年間ですが、STEM(Science、Technology、Engineering、Math)の分野の学位を米国で取得した学生は、雇用者が一定の要件をみたせば、さらに追加で17か月のOPT期間延長が認められていました。

つまり、STEMの学生は、卒業後29か月も米国で雇用されることができました。このルールの背景には、H1-Bという専門職のビザの発行数が限定されていることにより、OPT期間満了に際してH1-Bビザを申請しても、多くのエンジニアたちがビザの発行を受けられず、泣く泣く帰国せざるを得なかったという事情がありました(注1)。

科学やテクノロジーを学んだ学生に、長く米国に残ってもらい、米国の技術力発展に一役買ってもらおう(注2)という、移民大国・米国らしいルールです。

そして、このSTEM-OPT延長で活躍する(元)学生(多くがインド人や中国人)が集まるのが、シリコンバレーだということになります。2008年のこのルールの策定自体に、シリコンバレー企業からの膨大なロビイング資金が投入されていたことは間違いないと思われます。

(注1) これまでのルールでは、最初の12か月のOPT期間の終了の際に、適時にH1-Bビザの(切替え)申請をした者は、自動的に17か月延長されることとなっていました。
(注2) 間接的には、米国の大学の競争力強化も狙いの一つ。

stem-visa

812日判決 
Washington Alliance Technology Workers v. U.S. Department of Homeland Security

今年の8月12日、ワシントンDC連邦地裁は、このSTEM-OPT延長ルールの公布に際し、DHS(Department of Homeland Security = 国土安全保障省)に手続違反(注3)があったとして、このSTEM-OPT延長ルール全体を無効と判断しました。日本の公務員の方々の感覚では、そこの違反かよ、という感じだと思いますが、まぁ、これも米国的です。

ただし、同地裁は、この無効判決の効力は、6か月(2016年2月12日まで)効力を留保するとの条件を付けました。その6か月間の間に、DHSに再度、適正な公布手続(告知とパブコメ)により、ルール作りをやり直しなさい、ということです。

言い換えると、地裁も、このルールがいきなり無効になったら、シリコンバレー界隈が大変なことになることをよく分かっていたということかと思います。

(注3) Administrative Procedures Act違反。具体的には、60日間の告知・パブコメ期間を経なければならないところを、DHSは緊急時の例外(=テック企業が必要な外国人エンジニアを確保できなくて困ってる)に該当するとの前提で、短期間の告知・パブコメしか行わなかったもよう。連邦地裁曰はく、「その程度じゃ緊急じゃない」とのこと。

新ルールの告知・パブコメ

このようなことで、皆が待っていた新ルールが、ついこないだ、10月19日に告知され、パブコメに付されました。
新ルールの概要はざっくりと以下のとおり:
–    延長期間は24か月(もともとのOPTと合わせると、3年)
–    雇用者は、STEM-OPT延長者に対し、一定のメンター制度とトレーニングプランの実施義務あり
–    STEM-OPT延長者の給与や義務、労働時間が、米国人労働者のと同等(注4)
–    STEM-OPT延長は教育省認定機関で認定された一定の学校を卒業した者のみが対象
–    DHSは、OPTの趣旨に沿ったトレーニング等がなされているか、雇用の現場に訪問検査可

(注4) 米国人の雇用の保護は、米国ビザ法を支配する基本原理の1つ。

雇用者の遵守事項が少し増えてますが、割といい感じのバランスのルールのように見えます。

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