Convertible Note/Convertible Equityのキホン(5)

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久しぶりの登場です。

ここ最近、業務に忙殺され、なかなか記事を更新できないでいました。すいません。

でもその間、TMI関係者から「SAFEって何?」という質問をまた受けましたので、ここら辺でConvertible NoteからSAFEのお話に移っていこうと思います。

SAFEというのは、前にも話したとおり、「Simple Agreement for Future Security」の略で、Y Combinator(YC)という、シリコンバレーで最も権威と品格のあるアクセラレーターが、Convertible Noteの代替物として2013年の12月に公表したものです。

Y CombinatorのHPはこちら↓

https://www.ycombinator.com/

SAFEが公表された時のHPはこちら↓

http://blog.ycombinator.com/announcing-the-safe-a-replacement-for-convertible-notes

SAFEが掲示されているHPはこちら↓

https://www.ycombinator.com/documents/#safe

2番目のリンクから見られるプレスリリースのタイトルが「a Replacement for Convertible Notes」とされていることからも分かるとおり、 Convertible Noteの代替物として登場したものです。

このプレスリリース、シリコンバレーにおけるシードファイナンスの歴史のようなものを端的にまとめてくれているのですが、それによると、

(1)2008年に、Series AA関連の書面をキャロラインさんが作成し、我が職場であるWSGR とYCが公表した

(2)その後、2010年ごろから、YCは、YC関係のスタートアップに対して、Convertible Noteの利用をお勧めしだした。ちなみに、このConvertible Noteもキャロラインさんが作った。これによって、資金調達がすっごく簡単になった。

(3)でも、Convertible Noteをしても越えられない壁があった。それは借金であるという点であり、おかげさまで貸金関係の業規制との関係を考えなくちゃならんし、利息の存在によって転換の計算がややこしくなった。

(4)そこでキャロラインさんはまた考えた。Convertible Notenのように簡単で、だけど借金じゃないものを作れないものか、と(ちょっと意訳入ってます)。

(5)その結果開発されたのが、SAFEなのだ。すなわち、投資家は、株式そのモノを買う訳ではなく、さりとて、お金を貸す訳でもない。強いて言えば、ワラントに近い、株式を買う権利を購入するような感じかしらね。

ということです。

つまり、YCにお勤めのキャロラインさん(といってもパートナーですが。余談ですが、キャロラインさんは、実は元WSGRの弁護士らしいです。)が、YCが支援しているスタートアップがいかに合理的かつ効率的シードマネーを調達できるかをウ〜〜〜ンと考えてくれた結果登場したのが、SAFEというワケです。

キャロラインさん、大活躍してますね。頭が下がる思いです。

ということで、SAFEの存在意義の中心的な部分は、ほぼ上記のプレスリリースに凝縮されてしまっているのですが、Convertible Noteとの関係をちょっとだけ掘り下げながらメリットとデメリットを考えてみると、以下の感じになると思います。

convertible-note

<メリット>

雛形ががっちり固まっている。

SAFEの雛形は、YCのホームページ上で4パターンが公表されていて(4パターンの解説はまた後日)、数字さ埋めれば基本的にそのまま使えます。ということで、無駄なドラフト作業が発生せず、お手軽度が高いです。

Valuation Capを除いて、基本的に数字以外の交渉は予定されていないため、迅速に投資が可能。

雛形がしっかりしている上、数字以外の部分で交渉することは基本的に想定されていないため、とにかく早く話がまとまります。SAFEは、YCという私的な組織が出しているだけの書面ですので、加筆修正しようと思えばいくらでもできるんですが、加筆修正し出した途端に、お手軽さと迅速さが一気に減殺されるため、基本的に数字以外の部分は修正しないというのが、少なくとも現時点では暗黙の了解(ちょっと言い過ぎかも)のようになっていると思います。

DebtLoanではないので、各種規制(典型的には、日本で言うところの貸金業法)に服さない。

これは、上記のプレスリリースにも記載されていた通りですね。カリフォルニアの規制(California Finance Lenders Law)は結構厳しく、そのおかげで、Convertible Noteでの資金調達を必ずしも柔軟に行えない事態が生じる場合もありました。このデメリットを解消しようとして登場したのが、まさしくSAFEなのですが、個人的には、本当に解消されていると言い切れるの?という疑問が無い訳ではありません。この辺は、SAFEの法的取り扱いや会計的取り扱いとも関係してきますので、また追い追い。

上記のメリットの結果、弁護士報酬が安くすむことが多い。

Convertible Noteの時のもできてた点ですが、SAFEの場合は、無駄な交渉ごとがないため、さらに費用が抑えられます。

ご参考までに、SAFEのレビューを依頼されたときの典型的な業務の流れを紹介しますと・・・

①文書比較ソフトを使って、レビュー対象のSAFEとYCの雛形の比較版を作成し、

②数字以外に変な変更がなされていないかを確認して、

③OKですと返信する。

以上。

超シンプルですね笑 

Convertible Noteの場合は、これといった雛形が定まっているわけではないので、いちおうざっと目を通す必要があるのですが、SAFEは、雛形ガッチリのためそんな必要はありません。

「とにかく安い」

Convertible Noteの際にも強調したメリットですが、SAFEではさらにこれが強調できると思います。

<デメリット>

基本的には、メリットの裏返しがデメリットな訳ですが、一応まとめますと・・・

基本的にはValuation Cap及び/又はValuation Cap以外に交渉できない。

先ほども言った通り、べつに理論的に交渉できない訳ではないのですが、細かい交渉を始めると、「簡単・迅速」というSAFEのメリットが失われてきます。どこかで目にした記事(どこだか忘れました。すいません)によると、SAFEが登場した1つの背景に、Convertible Noteでの資金調達の実務が成熟して、ああだこうだと色々な条件や条項が盛り込まれ始め、結局けっこうな時間と費用がかかるような場合もでてきてしまったことがあるとのことでしたので、まあそんなことはやめましょうと、こうゆうわけです。時間の問題のような気もしますが、今のところは、交渉ナシよの姿勢がキープされているようです。

満期がなく、利息もつかない。

借金じゃありませんので、返済期限もありませんし、利息もありません。なので、放っておいても返ってくることは原則ありませんし、株式投資のようなRedemption(償還)やConvertible NoteのようにPrepayment(前倒し返済)を規定することも、上記のとおり基本的に交渉不可のため、実現は難しいです。

Seriesファイナンスが実行されない限り、投資金額が塩漬けなる可能性あり。

借金でないため、転換条項(一定規模のシリーズファイナンスの実行)に該当しない限り、投資したお金は基本的に塩漬けです。利息もないため、漬ければ漬けるほど美味しくなる、、、ということもありません。

今日は、SAFEの特徴をざっと見てきました。

このSAFE、使い勝手は良いのですが、日本的な法的思考で見てみると、結構謎めいた点も多いのです。次回以降は、そういった話も適宜混ぜ込みながら、もう少しSAFEについて掘り下げていこうと思います。

もうすぐ5月も終わりですね。皆さん、よい週末をお過ごしください!!

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