Convertible Note/Convertible Equityのキホン(4)

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Convertible Note(CN)の続きです。

マニアックな話が続いていて、90%以上の方にはどうでも良い話になっている気がしますが(苦笑)、始めた以上は続けようと思います。

前回は、Discount RateとValuation Capがどのようにワークするのかを見ました。

今回は、これらに基づいた転換する株式数の算出方法について、もう少し掘り下げていこうと思います。

前回、Discount RateとValuation Capを説明した際には、単純にするために、「転換される株式の数」のみに注目し、「どの種類の株式に転換されるか」については触れませんでした。

しかし、CNの次回ファイナンス時の「株式」への転換方法は、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。

(1) 全部が次回ファイナンス時に発行されるPreferrd Stockに転換される

(2) ディスカウント部分がCommon Stockに転換され、その他の部分がPreferred Stockに転換される

(1)のパターンは、極めて単純です。

資金調達時のValuationによって、Discount Rate又はValuation Capを基にした1株あたりの転換価格をもとに、元本と利息が全部Preferred Stockに転換されることになります。

投資家から見れば、すべてPreferred Stockに転換されるということでメリット(Preferred Stockに転換されれば、Liquidation Preferenceによって、将来M&A等が起こった時に優先的に投資を回収できることになります。

もちろん、Protective Provision(定款に書いてある●●する際にはPreferred Stockholderの過半数の決議を得よ!みたいな規定)や他のPreferred Stockholderに認められる権利が認められるようになる可能性が高まります)があることになります。

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他方、(2)のパターンは、少々複雑です。

このパターンで株式に転換されるCNを発行していたものの、いざ転換する局面になって計算しようとすると頭がこんがらがって分からなくなる…なんてことも少なからずあります。

このパターンですが、典型的には、以下のように規定されています。

1If a Qualified Financing occurs on or prior to the Maturity Date , then the outstanding principal amount of this Note and all accrued and unpaid interest on this Note shall automatically convert into fully paid and nonassessable shares of the preferred stock issued in such Qualified Financing and common stock, if applicable, at the Conversion Price.

2The total combined number of shares of preferred stock and common stock, if applicable, to be issued upon automatic conversion shall equal (x) the outstanding principal amount of this Note and all accrued and unpaid interest on this Note, divided by (y) the Conversion Price (the “Total Automatic Conversion Shares”).

3The Total Automatic Conversion Shares shall consist of (i) a number of preferred stock equal to (x) the outstanding principal amount of this Note and all accrued and unpaid interest on this Note, divided by (y) the price per share paid by the other purchasers of the preferred stock sold in the Qualified Financing (the “Automatic Conversion Preferred Shares”) and (ii) a number of common stock equal to (x) the Total Automatic Conversion Shares minus (y) the Automatic Conversion Preferred Shares.

*(1)〜(3)は便宜上付けています。

(1)では、所定の資金調達の際にCNの元本と利息が、所定の転換価格(Conversion Price)にてPreferred StockとCommon Stockに転換されるよと言っています。

で、具体的にどういうふうに転換されるのか、というのが(2)以降です。

(2)では、まず、転換によって得られる株式(種類を問いません)の総数を定めています。

CNの元本と利息を転換価格で割った数の株式が転換によって得られる総株式数(Total Automatic Conversion Shares)ですよと、こうゆうわけです。

その上で、(3)で、このTotal Automatic Conversion SharesをどのようにPreferred Stock((i)の部分)とCommon Stock((ii)の部分)に振り分けるかを定めています。

(i) の部分は、CNの元本と利息を、資金調達時に他の出資者が支払う1株あたりの金額で割った数だけPreferred Stockになりますよと定めています。

そして、(ii)の部分で、Total Automatic Conversion SharesからPreferred Stockの数を引いた数が普通株式になりますよと定めている訳です。

抽象的に考えても分かりにくいかもしれませんので、例えば、

CNの元本+利息:$500,000

資金調達時に参加する通常の投資家の1株あたりの購入価格:$1.0

Discount Rate:80%(転換価格=$0.8)

という前回の例を使って考えると、

(1)Total Automatic Conversion Shares:$500,000/0.8 = 625,000株

(2)Preferred Stockの数:$500,000/1.0 = 500,000株

(3)Common Stockの数:625,000 ー 500,000 = 125,000株

ということになり、要するに、通常の投資家よりも多くもらえる分(=Dicount分)はCommon Stockに転換されますよという話になるわけです。

このことをもって、

「ディスカウント部分がCommon Stockに転換され、その他の部分がPreferred Stockに転換される」

と表現されているわけです。

なぜこのようなややこしい転換方法をとるのかというと、会社側(厳密には、ファウンダー側)の基本的発想として、投資家側のメリットを少しでも限定したいという考えがあるからです。ここでいうメリットというのは、先ほどでてきたメリットと同じ内容ですが、主にLiquidation Preferenceになると思います。M&A等でせっかくExitできても、Liquidation Preferenceがある優先株式が多ければ多いほど、Common Stock側の取り分が減ってしまう可能性がありますからね。ということで、せめてディスカウント分くらいは、Common Stockに転換してもらって、投資家側のメリットを少しでも限定しましょうと、こうゆうワケです。みんな色々と考えるものです。

この考え方を会社側の視点から追求していくと、最終的には「全部Common Stockに転換することにしてしまえ!」というところに行き着くのですが、さすがにこれは投資家側に受け入れてもらえません。

ただ、CNやNote Purchase Agreementの中に出てくる定義語を慎重に検討していくと、実は、次回の資金調達がCommon Stockで行われた場合(ちょっとお金持ちのファウンダーさんがCommon Stockで追加出資した場合等)に、CNが全部Common Stockに転換される結果になってしまうような建て付けになっているものもあったりしますので、投資家側でも注意が必要です。

ともすれば、CN関連の書面は雛形っぽさ満載で、ついつい慎重なレビューを怠りがちになってしまうかもしれませんが、やはりそこは重要な書面。慎重にレビューしたいところです。

この2週間は色々あってちょっと更新のペースが落ちてしまいました。

来週から、また心機一転頑張っていこうと思います。皆さん、よい週末をお過ごしください!!!

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