シェアリング・エコノミーと業規制 (2) ソーシャル・レンディングと貸金業

前回は旅館業法とairbnbを念頭に「シェアリング・エコノミー」と業規制について、イントロダクション的なことを書いてみました。今回は引き続きUberについて書こうかな〜と思っていたものの、ちょっと思うところがあったため、ソーシャル・レンディングについて少しだけ書いておこうかと思います。

シェアリング・エコノミーの基本コンセプトは、「いま使ってないものがあって、必要としている人がいるなら、使わせてあげたらwin-winじゃん」というところにあるということは前回お話したとおりです。この考え方って、アレにとても親和性があると思いませんか?そうです、お金のニーズです。お金のシェアリング・エコノミーのことを、「ソーシャル・レンディング」なんて呼んだりもします。

例えば、A君が、どうしてもApple Watch Editionの金ピカちゃんが欲しいとしましょう。でも手持ちのお金が乏しい。そんなとき、業者さん=銀行やノンバンクにお金を借りる、というのがこれまでの基本的な姿でした。勿論、家族から借りるのが金利的には一番良いでしょうし(家族間であれば金利ゼロという場合も多いでしょう)、お友達に借りてApple Watchを買っても構いません。

では、シェアリング・エコノミーの考え方をこのような資金需要に対応させるとどうなるでしょうか。例えば、Bちゃんが、まとまったお金を持っているとします(例えば100万円)。

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(写真は今週開催中のマスターズに敬意を表し、オーガスタ・ナショナルGCの「マグノリア・レーン」)

Bちゃんは、その100万円を銀行に貯金してもいいですし、株を買ってもいいでしょう。そのほかに、「お金を借りたいと思っている人に貸してあげる」というオプションが入ってくることになります。でも、BちゃんがAくんを知っている場合、たとえば

Aくん 「お金を借りたいな〜、来月の給料日から、5回くらいに分けて返したいんだけど」

Bちゃん 「いいわよ、じゃあ100万円貸してあげる。弁済は来月の25日から5回に均等に分けて、利息を含めて1回あたり21万円でどう?」

Aくん 「それは嬉しいな!でもこのマイナス金利時代に、金利5%ってすんごい高い気がするよ…」

Bちゃん 「うるさいわね、じゃあ仕方ない、1回あたりの弁済額を20万5000円にしてあげるわよ」

Aくん 「ほんとに!それなら金利2.5%だし借りるよ!ありがとう!」

という話であれば、「知人へのお金の提供」ですから、これまでもあり得ました。金利が2.5%というのが高いか安いかはまぁさておいて(ご参考までに、4/10時点での参考6ヶ月TIBOR、金融機関間でお金を貸すときの金利は0.26%くらいです)、特に目新しい気はしないですよね。

しかし、

Bちゃん 「少しお金を運用に回せるわね。ネット上でお金が必要な人を探してみて、信用できそうなら貸してみようかな」

というモデルになるとどうでしょうか。一気に雰囲気が出てきますね笑。これがソーシャル・レンディングです。

実際、アメリカではソーシャル・レンディングはどんどん普及しています。代表的なのは、サンフランシスコ・ベースのLending Club。Lending Clubでは(しかしイイ名前です笑)、上限$35K(現在のレートで420万円くらいでしょうか)の借金を申し込むと、Lending Club側で当該ローンのリスク評価(A〜C)を行い、利率と月額の弁済金額を算出します。勿論誰もが借金に成功するわけではなく、申込みに対し実際ローンが付く確率は10%くらいとのこと(10件の申込みに対し、ローンが付くのが1件という計算です)。投資家(貸し手)は同社のプラットフォーム上で同社が算定したリスクを念頭に、貸付先を選ぶなどしてお金を貸し付ける、という仕組みです。401kのロールオーバー先として認められているため退職積立金をこちらで運用継続する方が増えている様子で、昨年末時点で貸付実績総額(※残高ではありません、あくまで実績ですが)は$7.6B、なんと今のレートだと9000億円近くまで到達しています。半端じゃありません。

ちなみにリーガル面で見ると、「ゆうてもボロワーが債務不履行になることはあると思うけど、レンダーはLending Clubに何か文句が言えるのかなあ」というところが気になります。Lending Clubが公開しているレンダー(貸し手)との契約書によると、同社は「あくまで資金ニーズと余剰資金をマッチングしているだけであり、ありとあらゆる保証は存在しませんよ、ボロワー(借り手)のデフォルト(債務不履行)リスクはレンダーが負うんだからね、うちは関係ないんだからね」ということがものすごく強調して書いてあります笑。そりゃそうですね、そうしないとこのビジネスは成り立ちません。

となると、日本ではどうなのかね、ということが気になります。

そもそも日本では、勝手に個人間のお金の貸し借りをマッチングすることはできません。それが、いわゆる貸金業法の規制です。まず、貸金業法2条1項にいう「貸金業」の定義を見てみましょう。貸金業とは、

金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うもの

とされています。

つまり、①お金を貸すことを業として行うモノ、②お金の貸し借りのマッチングを業として行うモノ、は貸金業に当たるのです。ですから、Lending Clubのようなビジネスは日本では簡単にはできません。②になってしまうかもしれないからです。

Lending Clubは間違いなく「金銭の貸借の媒介」ではありますから、問題はそれが「業として」行われているかどうか、ということになります。そして、貸金業法の「業として」の意義については、企業法務をやっている弁護士さんでも調べたことがない人の方が少ない、というくらいスーパー有名論点です。なぜか。親子会社間やグループ会社間で資金の融通を継続的に行う場合に、それが業として行う金銭の貸し付けなどになるのではないか、といった具合で一度はご相談を受けることがあるからです。資本関係のある会社間でどういう場合に貸金業に当たるか当たらないかについては既に金融庁が考え方を公表していますが、例えば取引先の信用状態が悪化したときにお金を融通してあげたい、といった文脈など、派生論点はいくらでもあるのです。

ちょっと話がズレましたが、結論を申し上げると、「業として」とは「反復して社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの」であると言われてます(なかなか分かりにくいですよね。それなのに違反した場合には罰則もありますから、なかなか厄介なシロモノなのです。余談ですが、この論点は、例えば親子・兄弟会社間の資金融通、信用取引、Convertible Noteでの出資などでもしょっちゅう検討課題に上がり、しょっちゅう法律実務家を悩ませています。)。

また、刑事事件の判例ですが、反復継続する意思で実行すれば該当しちゃうよ、利息などからお金を儲ける意思は関係ないよ、などと言われていたりするので、Bちゃんがこれまでもこれからも誰かにお金を貸すことがなく、Aくんに貸すことになったのはたまたまであれば、Bちゃんの行為も貸金業法違反にならない可能性があります。が、またお金に余裕があるときは誰かにかそーっと。ですとか、そもそもソーシャル・レンディングだろうが何だろうが、他者に継続的にお金を貸し付けていこうとするのであれば、それはおそらく「業として」であり貸金業です

貸金業の登録をすることが必要になりますし、貸し手さん自体もおそらく貸金業の登録を受けなければならないでしょう。技術的で細かい話を無視すれば、Lending Clubが貸金業の登録をすることはできると思いますが、貸し手にイチイチ貸金業の登録を求めるのは現実的ではありません。ですので、結論としては、全く同じようなモデルを追求するのは難しそうです。

では似たようなモデルも無理か、というとそんなことはありません。まず、貸し手の方からの資金提供を貸付としてではなく、出資とする方法があり得ます。この場合、貸し手のお金はファンドへの出資であり、借り手への融資は(貸金業登録をした)ファンドからの貸付として整理されます。つまり、貸し手のお金はファンドへの出資(難しくなりますので詳細は割愛しますが、通常日本では匿名組合契約に基づく出資という形態をとります)であり、借り手への融資は(貸金業登録をした)ファンドからの貸付けとして行えば良いのです。勿論、この場合でもファンド運用者であるマーケットプレイス運用者が無規制になるわけではなく(結果の面から見ればストレート貸金モデルと近い現象ですから、そりゃそうですね)、今度は金融商品取引法上の登録が必要になります。ですが、貸し手の方々にイチイチ貸金業の登録を求めるようなことにはなりませんので、ソーシャル・レンディングの概念自体はきちんと実現できそうです。

日本でのこの分野(ソーシャル・レンディング)の先駆者はマネオさんですが(マネオさんのサービスが完成するまでの実に興味深いインタビューはこちら)、マネオさんでも匿名組合が利用されています。そんなマネオさんは、設立から6年で成立ローン総額は270億円超と正に素晴らしい実績。新しい分野に取り組むことは色々な規制と折り合いをつけながら事業を進めることをも意味するため、大変なご苦労もあったことかと推察していますが、本当に凄いなぁと頭が下がる思いです。

ソーシャル・レンディングに限らず、FinTechの文脈は、常に金融レギュレーションとの関係に配慮しながらスキームを構築する必要があります。この意味で、ソーシャル・レンディングもFinTechも、事業検討時から弁護士の積極的な関与が必要になる分野であり、(しかも金融レギュレーションに詳しい弁護士さんは日本全体で見ると少ないため)それなりの当初資金を弁護士費用に充てることとなるモデルでもあるのです。ITやハードなどのStartupでは通常起業の直前直後から弁護士とビジネスのスキーム検討をすることはありませんから、これってなかなか凄いことですよね。

考えてみれば、住宅ローンのように超長期に亘る弁済が予定されていて、元本額も大きくなるローンでは、借り手の信用リスクさえ担保できればかなりチャンスのある市場のような気もしますよね。って、「信用リスクの担保」が一番難しいことは昔から同じであって、そこにプロとしての評価ができるから銀行さんの存在は不変なのだ、ということができそうですが、SNS時代の新しい信用情報の考え方自体を作りだそうとするStartupなどもありますし、銀行さんが引き続き注視する分野であることも頷けます。マネオさんの創業者の方もそうですが、比較的、金融機関にお勤めだった方が起業されるのに適切な分野なのかもしれませんね。

というわけでシェアリング・エコノミーシリーズ第2回は、ソーシャル・レンディングと貸金業法についてでした。だいぶ話があっちこっちに飛んでいますが笑、引き続き徒然なるままに思い付いたことを書いていきたいと思います…。

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