Convertible Note/Convertible Equityのキホン(2)

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さて、今回からは、CN/CEの具体的な中身についてみていこうと思います。

最近、Seed Roundについては、より簡易なSAFEでの資金調達が増えてきているように思いますが、主流は、まだまだConvertible Noteだと思いますし、CNの仕組みがきちんとわかっていれば、CEも理解できますので、まずはCNについてしっかりとみていこうと思います。

で、そのCNですが、CN本体はシンプルなもので3-4頁程度と、分量はさほど多くはありません。が、そうはいっても、資金調達の一種ですので、条項自体は複雑になりますし、なぜかCNの書式は余白がやたら狭いことが多く、文字がぎっしりで結構な迫力があります(笑)

ということで、いきなりCNの本チャン書式で交渉を始めると負担が大きいですし、交渉に無駄に時間がかかってしまう可能性大ですので、通常は、タームシートから交渉が始まります。

このタームシートにも、色々とパターンや書式があるのですが、もっともシンプルなタームシートには、予定している資金調達額や、クロージング予定日のほかに、以下のような事項が記載されています。

①Interest Rate(利率)
②Term(期間)
③Qualified Financing(転換事由となる資金調達)
④Purchase Price(転換価格)
⑤Automatic Conversion(自動転換)
⑥Change of Control(チェンジ・オブ・コントロール)
⑦Amendment(改定)

で、どれが重要なの?という話なのですが・・・どれも重要です。だってタームシートに書かれてるんですから、そりゃ重要でしょう笑

ということで、それぞれの条項について以下で簡単に解説していこうと思いますが、⑧については、うっかり見過ごすと後々痛い目を見ることもありますので、しっかりとその存在を頭に入れておきましょう。

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Interest Rate
そのまんまの意味で、1年間に付される利息の%です。

CNの本質が借金であることをよく示していますね。数パーセント程度が通常だと思いますが、調達相手によって変わってくるところです。Applicable

Federal Rates(AFR)という、アメリカの歳入庁(IRS)が毎月定めている利率の方が高ければ、そちらを利用する旨が定められていることもあります。

Term
借金ですので、もちろん返済期限(Maturity Date)があります。この返済期限までに次に説明する「Qualified Financing」を実現できないと、本当に借金を返済する必要が生じることになります。

Qualified Financing

CNが転換される事由となる資金調達のことです。どんな資金調達でもCNが株式に転換されてしまうわけではなく、一定の規模の資金調達があったときに始めて転換されます。通常は、$1millionとかそのくらいの数字が設定されます。

④Purchase Price

CNが株式に転換される際の1株あたりの転換価格を算出するにあたってベースとなる考え方書いてあります。

CNは、CNの元本と転換までに生じた利息の合計額を1株あたりの転換額で割った数の株式に転換されますので、1株あたりの転換価格が高くなれば高くなるほど、CNの保有者にとっては転換によって得られる株式数が少なくなり、CNの保有者にとってはうま味が少なくなります。

逆に、1株あたりの転換価格が低くなれば、CNの保有者のうま味が増え、ファウンダーの持分が減ることになります。この「1株あたりの転換価格が高くなればなるほど、転換によって得られる株式数が少なくなる」という点をしっかり腹に落としておきましょう。

その上で、キーとなるタームが「Discount Rate」や「Valuation Cap」というものなのですが、これは別に説明した方が良いと思いますので、また後日ということで。今日のところは、とにかく、「1株あたりの転換価格が高くなればなるほど、転換によって得られる株式数が少なくなる」という点を、頭に叩き込んでおきましょう。

Automatic Conversion

Qualified Financingが起こった返済期限の前に始まったら、元本と利息が自動的に株式に転換される旨が定められています。

すべてQualified Financingで発行されるPreferred Stockに転換されることもありますが、最も多い転換パターンは、Preferred StockとCommon Stockの組み合わせではないかと思います。具体的な組み合わせ方法ですが、よく「Discount分はCommon Stockで、その他はPreferred Stockで」と言われたりします。

これだけじゃ何のこっちゃ分からんことは確実なので、具体的な転換例を挙げつつ、追い追い説明したいと思います。

Change of Control

Qualified Financingと返済期限の到来前にChange of Controlが生じた場合(典型的には、議決権の50%以上の株式が第三者に買われた場合)に、CNがどのように処理されるのかが記載されています。

例えば、

「upon the election of the Note holder, either (i) all principal and interest under such holder’s Note shall be repaid with a premium equal to 100% of the outstanding principal, or (ii) all principal and interest shall  convert into shares of the company’s common stock at the valuation cap」

といったようなことが書いてあり、要するに、CN保有者が、①元本+利息+元本100%分のプレミアムの返済か、②valuation capをベースに計算した数のCommon Stockへの転換(=M&AでそのCommon Stockを一緒に売れる)のどちらかを選択できるわけです。

で、①が意外とくせ者なのですが、単に元本+利息を返済すればそれで終了、というわけではないんですね。「with a premium equal to 100% of the outstanding principal」ということで、元本だけでなく、元本額をさらにもういっちょ上乗せして返さねばならんということで、要するに、利息を除いてほぼ2倍の返済になります。

この%部分が、例えば200%になっていれば3倍、300%になっていれば4倍ということになります。この条項、Early stageの段階でM&AでExitしようと試みた時に、かなり大きく響いてきます。

例えば、$3Millionでの買収提案があった場合、その$5Millionという評価は、CNで入れてもらっているお金を含めての評価である場合があります。そんな場合に、例えば2倍のプレミアムのついたCNを$500,000ほど発行していた場合、M&AにあたってCN保有者に$1Millionを返さねばならず(メンドクサイので利息は無視)、したがって、実質的な会社の価値は$2Millionということになってしまうわけです。

近年、Early StageでのM&A Exitが増加している傾向にありますが、うかつにM&Aプレミアムの多いCNを発行していたりすると、いざM&Aを進めるにあたって大変お邪魔な存在になったりします。

ということで、CNの交渉をする際には、まずはM&Aプレミアムをゼロで提案し、それがダメでも、できるだけ低いプレミアム率を目指してしっかり交渉することが重要です。

Amendment

CNの改訂をするための要件を示しています。1人あたり$100,000で5人から合計$500,000を調達した際に、誰が合意すればCNの条件等を変更できるかを示しています。

典型的には、

「holders holding a majority of the aggregate outstanding principal amount of the Notes」

(CNの未返済元本の過半数の保有者。上の例だと3人)

などと書いてあります。残念ながら返済期限までにQualified Financingが叶わずに返済期限を先延ばししたいな〜なんて時に、全員と合意しなければならないのか?という疑問に答えるのがこの条項です。

長くなってしまいましたが、CNのタームシートをざっと眺めてみました。

次回以降、もうちょっと細部の説明に入っていきたいと思います。

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