アメリカでの会社設立(6)〜定款における責任限定と補償〜

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Certificate of Incorporation(以下、面倒なので「定款」)の内容ですが、法律上要求されているのは、先日説明した(1)〜(5)のみであり、実際、デラウェア州のDivision of Corporationのサイトに行くと、この最低限の内容のみを記載した定款の雛形が手に入ります。

http://corp.delaware.gov/incstk09.pdf

しかし、シリコンバレーでStartupを始める際に、本当にこの必須事項だけを記載した定款でいいのかというと、実務的にはそうなっていません。日本の定款にも「必要的記載事項」のほかに「任意的記載事項」があるように、デラウェアの会社の定款にも、任意的記載事項があります。

任意的記載事項の全貌は、そのうち時間がある時に明らかにするとしまして、ここでは、Startupにとって重要なものとして、

  • Directorsの責任限定
  • Directors/Officersに対する補償

の2つを挙げておきたいと思います。

まず、「Directorsの責任限定」ですが、デラウェア会社法の条文上、定款で、「Directorの、Fiduciary Duty違反に起因する会社又は株主に対する金銭的損害を限定できるよ」と書いてあります。

Fiduciary Dutyというのが、これまたややこしい概念でして、日本でも散々っぱら議論されてたりするのですが、とりあえずは、日本法で言うところの善管注意義務(これ自体もよく分からんと思うかもしれませんが。。。)と思っておいて良いと思います。要するに、「不注意で会社に損害を与えてしまっても免責/責任限定される旨を定めて良い」ということです。

ただ、なんでもかんでも免責されるかというと、そういうわけではなく、忠実義務に違反していたり(例えば、利益相反取引)、わざとヘマをしたり、そんな場合にはさすがに免責されません。また、あくまで免責の対象は、Directorになった後の行為であって、なる前の行為についても、免責されません。ま、この店は、Startupで新たに会社を始めようとする人には関係ないですね。

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次に、「Directorsに対する補償」ですが、これは要するに、DirectorとかOfficerになったことに起因して民事や刑事、その他もろもろのメンドクサイ手続に

巻き込まれてしまった暁には、法律が許す範囲で会社がきちんと費用を面倒見ますよ、というものです。会社のために働いていてそんな面倒な事態に巻き込まれてしまったんだから、当然と言えば当然です。

ただ、これも何でもかんでも補償されるわけではなく、「法律の許す範囲で」となっているわけで、誠実に、会社の利益にに反しないように行動していたとか、刑事の場合には、自分の行動が刑事沙汰になるなんて夢にも思っていなかった!なんて要件が必要だったりする訳です。

ちょっと細かい話に入りすぎましたね。これからStartupを始めようとする人には、別にすぐにどうこう関係してくるワケではないのですが、自分の会社の定款に何が書いてあるかくらい、しっかりと分かっていた方が良いかなと思い、ちょっとだけ立ち入ってみました。

ここで説明した条項が入った定款の見本については、そのうちDownloadページにアップします。こう言っちゃなんですが、上記の2つの条項、短いわりに結構読むの大変なんですよね。皆さん、本当に読んでからサインしてるのかなぁ・・・自分だったら絶対心が折れて読まないよなぁ・・・と思ったり。

次回からは、もっと実務的な話を中心にしていきたいと思います。

ようやく金曜日も終わり。みなさん、良い週末をお過ごしくださいませ!

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