シリコンバレーにおけるStartupとLaw Firmということで、日本での弁護士業務の経験とWSGRでの経験を比べて、気付いたことをツラツラと書いてみようと思います。
法律関係の情報提供などという高尚なものではありませんが、気楽な読み物としてお読みいただければと思います。
(1)会社関連資料の管理
日本では、少なくとも会社関係の基本資料(定款、取締役会議事録、株主総会議事録、契約書等々)の原本管理はクライアントである会社の役目であり、その他の記録の管理も基本的には会社にお願いしているのではないかと思います。
これは、基本的にStartupがクライアントであっても変わりません。
もちろん、事務所側で作成したドラフト等は、事務所に保存されているのですが、最終版(サインされたバージョン)まできちんと写しなりPDFなりで送ってもらい管理しているかというと、必ずしもそうではないと思います。
ところが、シリコンバレー(というか少なくともWSGR)では、基本的には最終版(サインされたバージョン)を必ずクライアントから送ってもらい、きちんとデータベースで管理します。
聞くところによると、電子データのみならず、原本の保管まで行っている法律事務所もあるようです。
それで、いざ資金調達の局面になり、投資家サイドによるDDが必要になった場合には、Law Firmの方でデータルーム(といってもオンラインですが)を作り、我々のほうで保管してある資料をアップし、DDに供します。
なので、データルームの設置からDDまで、かなりスムーズに進みます。
もちろん、クライアントによっては、それを好まないところもあるようですし、諸般の事情により記録の管理が行き届いておらず、あたふたしたり、アップデートに追われることもあったりなかったりするわけですが(だって人間だもの。)、基本スタンスは「Law Firmで管理」であり、単なる個別の法律業務の外注先ではなく、総務/法務機能の総合的なアウトソース先として機能していると言えば、分かりやすいのかもしれません(ちょっと言い過ぎのような気もしないではないですが)。
実はこれ、ちょっと考えてみれば当たり前で、なにせクライアントはStarupなんですから、総務とか法務とか、そんなしっかりした区分はない、、、というか、そもそもそんなことに力を使っている場合ではないわけです。
みんなビジネスに資金繰りにネットワーキングに大忙し。法務文書の記録や保管に気を配っている暇なんかないのかもしれません。 ちなみに、こちらでは、会社を設立しても、特に必要がない限り、実務上株券を発行しません。
資金調達の局面でVCから求められたりしたら、その都度発行する感じです。
で、その理由は至って簡単。
「発行してもどうせ無くすから」
以上。
分かりやすい超合理的な理由ですね。
こちらで実務をするようになってよく耳にするようになった言葉として、「house-keeping」という単語があるのですが、こちらのLaw Firmは、そんなこんなで、まさしく会社のHouse keeperとしての役割を担っているのだなと感じます。
ほんとは別の項目も書こうと思ってたんですが、予想外に長くなってしまったので、今日はここまで。