前回、どの州でCorporationを設立すべきかという点に関して、
②特にアメリカでの資金調達を考えておらず、純粋な現地子会社に過ぎないのであれば、California corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)
と書いたかと思います。
前回触れられなかったので、今回はこの点について。
Delaware corporationで設立する最も大きな理由が「投資家目線」であることは、前回説明した通りです。
そして、「純粋な現地子会社」の場合、この「投資家目線」というのは、全く必要ない訳です。この手の子会社の場合、基本的には、日本の親会社が必要な資金はすべて入れてくれることが想定されてますからね。
では、
(B)会社法を専門に扱っている裁判所があり、迅速で判例も多いので、予測可能生が高い
(C)デラウェア裁判所は、きちんとやるべきことをやっていればDirectorsのビジネス判断を尊重してくれる傾向にある
といった理由がどれほど当てはまるかというと、これも正直「?」がつくことが多いのではないかと思います。日本の親会社が100%親会社として君臨している以上、会社法絡みで揉めごとになることも少なくなりますし、株主代表訴訟のさらされるリスクも低くなります。
ということで、「純粋な現地子会社」については、積極的にDelaware corporationを選択する理由が乏しくなってくるわけです。
そして、Delaware corporationを設立することによって生じるFranchise taxの存在を考えると、デラウェア州で積極的にビジネスを展開するのでない限り、Delaware corporationで設立することがデメリットとなる可能性があります。
Franchise taxというのは、2010年8月からデラウェア州でDelaware corporationに対して課されるようになった税金で、言ってしまえば、デラウェア州でCorporationを設立したことに対する「みかじめ料」みたいなものです。
この税金、最小で年間$175、最大で年間$180,000と、かなり大きな振れ幅があるのですが、基本的には、Authorized shares(発行可能株式総数)をベースに計算されます。
具体的には、発行可能株式総数が
5千株以下 → $175
5千株超1万株以下以下 → $250
1万株超 → 1万株ごとに$75
といった感じです。
これとは別に、1株あたりの株式価値をベースに計算する方法もあるのですが、気前の良いことに、発行可能株式総数ベースの計算と1株あたりの株式価値ベースの計算とで、「どちらか低い方」を選べば良いことになっています。
となると、日本に100%親会社があって、発行可能株式総数は100株とかせいぜい1000株の会社の場合には、Franchise taxはせいぜい年間$175だったりするわけですが、そうは言っても、あえてDelaware corporationにする積極的な理由も無いのに年間$175もみかじめ料を払うのはちょっとね・・・ということで、基本的には、「純粋な現地子会社」については、California corporationでいいんじゃないですか?とアドバイスを差し上げているわけです。
それに、Delaware法人がカリフォルニアでビジネスする場合には、Qualification to do businessというのをカリフォルニア州から得なければならず、そこでまた余計な時間と費用が生じます(これも、しっかりした親会社が日本にあるような会社からすれば些細なものなんですけどね)。ということで、やっぱり「純粋な現地法人」にはCalifornia corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)がおすすめだよ、ということになりそうです。
余談ですが、このデラウェア州のFranchise tax、実は、「純粋な現地法人」よりも、スタートアップの方により影響があります。というのも、シリコンバレーのスタートアップは、通常1000万株や1500万株の発行可能株式総数で設立されるからです。この株数を前提にみかじめ料を計算すると、あっという間に$180,000に!おいおい、そんな額、スタートアップには負担が大きすぎますって!!
…でも大丈夫です。先ほど言った通り、1株あたりの株式価値をベースに算定する方式が別に用意されていて、こちらの最低税額は$350。で、スタートアップはもちろんこの$350の税額に収まる訳です(こちらの計算式については、おいおい、必要に応じて)。
ということで、スタートアップの皆さん、(年間$350のみかじめ料も結構高いですけど)安心してデラウェア州でCorporationを設立しくださいね!
次回からは、具体的な設立手続きについて入り込んでいきたいと思います。