虎穴に入らずんば虎児を得ず(No Risk, No Gain)

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昨日1月18日、Draper Nexusがミッドタウンで開催したイベントに出席してきました!

名付けて「B2Bサミット」。B向けビジネスを展開されるスタートアップへの投資と支援を中心とする活動をされている、Draper Nexusらしい凄いイベントでした。今回が初めてのイベントでしたが、またやって欲しいです!

その内容はスーパー豪華なメンバーによるパネルからピッチまで盛りだくさんだったわけですが、特に印象に残ったのが、NVCA(全米ベンチャーキャピタル協会)のChairであり、名門VCのMenlo VenturesのMDでもある、Venky Ganesanさんのキーノートでした(しかし、こんな人の話を東京で聴けるなんて、いい時代ですね!)。

VenkyさんはPalo Alto Networksへの投資家として、また最近はGildなどへの投資家としても知られていますが、そのお話は大変に含蓄ある、素晴らしい内容でした。だいぶ意訳、というか僕が受け取ったメッセージの羅列にすぎませんが、今回のポストではそのエッセンスだけでも記録しておければと思います。
※今後、ひょっとしたらDraper Nexusのウェブサイトとかにキーノートがもっとちゃんと記載されるかもしれませんので、もしそうなったら皆様必見です。

1. 過去、最も素晴らしく、インパクトのある旅を実現したアントレプレナーと、そのアントレプレナーに投資をした素晴らしい投資家の物語

皆が「無理だ、できない」といったことを実現した、誰よりも勇敢なアントレプレナーは誰でしょう。最初にそのアントレプレナーが投資家にピッチしたとき、投資家は、その提案を拒否しました。しかし、そのアントレプレナーは、少しずつ提案内容を変化させながら、何度も何度も提案を続けました。

「最初のキャピタリスト」は、最終的に、しぶしぶながらもそのアントレプレナーに投資をすることにします。その代わり、将来、そのベンチャーの利益の10%をその投資家に支払うことが条件でした。この、最初のアントレプレナーと投資家って誰でしょうか??

ジョブス?ザッカーバーグ?違います。それは、クリストファー・コロンブスと、スペインのイザベラ女王でした。

そう、アメリカの歴史は、起業家精神(Entrepreneurship)とベンチャーキャピタリストの歴史です。アメリカの発見は、アントレプレナーの情熱、そしてキャピタリストのリスクテイクにより実現されたのです。

(ちなみに、キャピタリストが投資案件から得る成功時の利益のことを「キャリー」とかキャリード・インタレストと呼びますが(※厳密にはLPに出資金額を払い戻した後の成功時分配金のことですが、細かな話はこの際省略)、この「キャリー」は、正に船長が安全に積み荷を運ぶことができたときの報酬(よく運んだぞ報酬)を語源とする、という話もありました。個人的には知らなかったことで、ほぉぉぉなるほど!と膝を打つような内容でした。)

2. 日米のエコシステムの状況ってどーよ

2016年のある時点で、マーケットキャップが大きな5つのアメリカの会社は、Apple、Alphabet、Microsoft、AmazonとFacebook。この5社はVC投資を受けて成長した企業ですが、3社は設立から20年も経っていません。

逆に、日本の大企業100社のうち、設立から20年が経っていない会社は、楽天だけです。この、アメリカと日本の差って何なのでしょうか?おそらく、日本に、活気あるベンチャーキャピタルのエコシステムがないこと、だと思っています。

3. 日本とアメリカの差

2015年、アメリカのVCが投資した金額は約$77B。これに対し、ヨーロッパは約$4B、日本は約$1B。90年代初頭、日米のVCの差は約4倍だったのが、いまでは約75倍まで開いてしまいました!いくつか、この状況には理由があります。

(1) 1979年、NVCAのロビー活動が実り、パブリック・セクターの年金ファンドがVCに投資できるようになったこと。これにより、格段に大きな資金がVCに流入し、VC産業が「プロフェッショナル化」しました。これに対し、日本では、まだ年金ファンドがVCに投資をすることは難しい規制が残っています。
(※個人的に、これはどの規制のことなのか正確に把握仕切れていない部分があります。宿題として調べておきますです。)

(2) 起業家とキャピタルゲインに対しフレンドリーな税金制度。日本も良くなってきていますが、アメリカでは1978年の税率の半分まで下がっています。これによりVC投資が劇的に増加しました。

(3) シリコンバレーやボストン、ニューヨークのような、それぞれのエコシステムが発生したこと。それぞれの場所では、大学、法律家、会計士、不動産のプロなどがフレンドリーに起業家をサポートしています。

(4) エンジェル投資家、シード投資家が活発にシードマネーを供給していること。特に、成功した起業家はその資金を再度次のスタートアップに投資し、その好循環が生じています。

(5) フォーチュン500に掲載されるような大企業が、スタートアップのエコシステムのプレイヤーとして活躍していること。アメリカではCVCが劇的に増加し、これに伴いM&Aのトランザクション金額も劇的に増加しています。

(6) 起業家精神を後押しする、文化的な要素。失敗は将来の仕事において死を意味しません。また、法人の倒産は、個人レベルには影響しません(日本には嫁バリアがあるそうですね。)。

では、日本では起業家精神やVCは発展しないのでしょうか?
-そんなはずはありません!

4. 頑張れニッポン

日本の教育レベルは非常に高い。ノーベル賞受賞者の数を考えて下さい。ウォークマン、Nintendo DSなど、世界に波及したプロダクトのいくつかは日本製でしょ?特許申請の数も日本は非常に多い。

日本の大企業は、SIerさんのみに頼るのではなく、自らテックカンパニーになるべきです。今の時代はSoftware is eating the worldでしょ、と。

開かれた移民政策をとりませんか。シリコンバレーの起業家の1/3は移民ですよ。
年金ファンドからVCへの資金流入を劇的に増加させましょうよ。
起業家に注目するメディアを持ちましょう。起業家のストーリーを皆に見せるのです。

大企業はスタートアップのエコシステムに参加しましょうよ。協力企業として、投資家として、買収者として起業家のDNAを取り入れて、スタートアップのエコシステムを支援しましょうよ。

NVCAの議長として、私はアメリカのイノベーションと起業家精神の促進と発展を目指すのが仕事です。でも、世界に生きる者として、起業家精神が世界中を覆っていくことは、もっと素晴らしいことだと思っています。

最後に、日本のことわざをお伝えしてお話を終わります。

虎穴に入らずんば虎児を得ず

ありがとうございました。

+++

どうでしょうかみなさま。聞く人によって感じ方はそれぞれだと思います。特に、大企業とスタートアップの関わりの部分は、頭では理解しているものの、改めて聞くと「なるほどな」と思われる方も多いかもしれません(もちろん、日本の大企業はかくなり難きということも、一方でよく分かります笑)。

僕は、熱くて感動しました。僕としては、久しぶりにまたこの分野、業界、人々への熱い気持ちを新たにさせてくれる、素晴らしいスピーチだったと思いました。

今のスタートアップ、VC産業は、日本の産業構造が大きく変わっていく一つの流れの中にも位置づけられると思っていますが、そもそもなんで好きかというと、取り巻く人々が魅力的なんですよね。ある意味保守の極み的な職業に就いている我々ですが、我々自身が虎穴に突入し、リスクテイクする人たちを最大限応援したいなと、そんな気持ちになった一日でした。

最後になりましたが、素晴らしいイベントにお邪魔させてくれたDraper Nexusの皆様、本当にありがとうございました!!

 

 

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