Pro Forma Cap Tableの作り方・読み解き方

突然ですが、Cap Tableってご存知でしょうか?

会社の資本構成を示した表のことで、よくEXCELを使って作られているアレです。

Cap Tableは、もちろん現在の会社の資本構成を示すために使われることも多いのですが,それ以上に、例えば資金調達をする際に1株あたりいくらで引き受けてもらうのかという株価の算出や、資金調達後にあるべき資本構成を示すために頻繁に用いられます(このようなCap Tableのことを、Pro Forma Cap Tableと言います)。

このPro Forma Cap Table、創業者にとっては、資金調達によってどのくらい自分の株式が薄まってしまうのかを具体的に知る手がかりになるものですし、投資家サイドからは、逆に自分の投資金額が具体的にどの程度の割合の株式に化けるのかを具体的に知る手がかりになるもので、極めて重要です。

ですが、このPro Forma Cap Table、簡単なように見えて案外厄介です。

結構いろんなところに陥りやすい罠(というのが適切かはわかりませんが)があり、正確に作るのには結構手間がかかります。また、他人が作っCap Tableでそれが見慣れないフォーマットだったりすると、レビューするのに異様に時間がかかったりすることもあります。

ということで、案外苦しみがちなPro Forma Cap Tableの紐を解いてみようというのが、今回のポストの趣旨でございます。

当たり前ですが、Cap Tableは会社によって違いますし、会社がそれまでにどのような株式を発行しているか、どのような資金調達をしているか、そしてこれからどのような資金調達をしているかによって大きく変わってきます。

ただ、典型的な事例をベースにCap Tableを作成する方法を理解すれば、あとはそれを応用していくだけですので、まずは基本的な事例をベースに基本をしっかり抑えましょうというのが今回のテーマです。

じゃあ何が基本的な事例なのさ?

という話になると思いますが、ここでは、以下の事例前提にPro Forma Cap Tableを紐解いていきたいと思います。

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で、早速ですが、この事例をEXCELに落とし込んだのが、こちらからダウンロードできるPro Forma Cap Tableになります。

Pro Forma Cap Tableをダウンロード

このCap Tableのうち、「Start」と「Stock Option」、そして「Bridge Note & SAFE」のH行までは、上記の前提が記載されているだけですので、簡単に分かると思います。

一番の問題は、「Series A Pro Froma」の読み解き方で、これは、ちょっと複雑です。

ですが、「Series A Pro Froma」が何を目的に作られているのかを頭にしっかりおいて、そこから何が必要になるのかを一歩一歩たどって考えていけば、すっきり頭に入るのではないかと思います。

「Series A Pro Froma」の目的は、もちろん、

Series Aの投資を実行した後の資本構成がどうなるのか、その試算を示すこと」

にあります。

では、「Series Aの投資実行後の資本構成がどうなるかを示すには何が必要か?」というと、それは、

Series Aの株式を1株あたりいくらで発行するのか」

という点になります。

これが分からないままだと、投資してもらえる額が決まっていても、投資後にSries Aの株式が何株発行されるのかが分からず、試算なんてしようがないからです。

そのため、Cap Tableでいうと、黄色のハイライトがついた「Series A Price Per Share」(B10)が一番重要なわけです。

では、その1株あたりのSeries Aの発行価格はどのように求められるのかというと、その算式は非常に単純で、

会社のその時点でのValuation ÷ その時点の会社の株式数

ということになります。

このうち、②が一定であることを前提にすると、①が大きくなればその分1株あたりの価値が上がる(=投資によって得られる株式数が減る)ことになりますし、逆に①が一定であることを前提にすると、②が増えればその分1株あたりの価値が下がる(=投資によって得られる株式数が増える)という関係にあります。

なので、①と②について色々ネゴることになるんですが、今回の事例では、①会社のその時点でのValuation(Pre-money)は$10Mと決まっていますので(B2)、残るは、②のみを考えればよいことになるわけです(B9)。

で、その②ですが、少なくとも発行済株式(合計900万株)は全部入れなければならないことはすぐに分かると思いますし、既に付与しているOutstanding Option(35万株分)もおそらく入れなければならないことは、直感的に分かると思います(もちろん議論の余地はありますが、付与している以上通常は入れますね)。

問題となるのは、

(1) まだ付与していない、だけど付与可能なAvailable Option Pool(今回で言うと65万株分)を考慮すべきなのか。

(2) Series A投資後にAvailable Option Poolを15%分確保するよう要求されているが、それを考慮すべきなのか。

(3) 発行済みのConvertible NoteとSAFEが今回のSeries Aラウンドに伴って転換されることで発行される株式は考慮すべきなのか。

という3点です。

いずれも、考慮すれば②の分母の数が増えますので、その分、Series Aの1株あたりの価格が下がる、したがって、同じ額を投資しても投資家が得られるSeries Aの株式数が増える、という関係にあります。

まず(1)ですが、これは通常考慮することになります。

すでにOption Poolとして確保されており、将来その分だけ株式が発行される可能性が具体的にあるのだからそのOption Poolも会社の価値を構成していると考えるべき、というのが理由です。

ということで、②分母は今のところ

900万株+35万株(Outstandin Option)+65万株(Available Option Pool)=1000万株

です。

次に(2)ですが、単に「Series A投資後のAvailable Option Poolを15%にするよう要求されている」だけでなく、「10M including ・・・(ii) 15% available option pool (post-money)」となっているのが重要です。

これが何を意味しているかというと、

「Series Aの投資後にAvailable Option Poolが15%(通常はFully-diluted Basis)になるようにあらかじめOption Poolを増やして、その増やした分も含めてValuationが$10Mと考えてくださいね(=分母(②)に増やした分のOption Poolも入れてくださいね)」

ということです。

そのため、今回の事例では、「あらかじめ増やす必要のあるOption Poolの数を計算した上で、それを②に加える」というちょっと厄介な計算を入れる必要があります。その計算をしているのが、B5~B7です。要は、最終的なSeries A後のFully Diluted Sharesの数(O33)に15%をかけた数(B7)から、すでに存在しているOption Poolの数(B5)を引いて、事前に増やすべきOption Poolの数を求めています(B6)。

今回のCap Tableでは、最終的には1,905,902株分のOption Poolを増やすと、Series A後に、既存の65万株分のOption Poolと合わせてちょうど15%になる計算になったので、この1,905,902株を②として加えることになります。

ということで、②分母は今のところ、

900万株+35万株(Outstanding Option)+65万株(Available Option Pool)+1,905,902(Available Option Poolの増加分)=11,905,902株

です。

余談ですが、特にSeries Aの段階で「Series A投資後のAvailable Option Poolをあらかじめ増やす」(=Pre Money Valuationに含める)というのは、すなわち、創業者の持分からOption Poolを捻出することになる結果となるのが通常です。そのため、これを増やしすぎるとSeries A実行後の創業者の持分がやたら減る結果となることもありますので、注意が必要です。

最後に(3)ですが、これを考慮するかどうかは実は時と場合によります。

Convertible NoteやSAFEによる資金調達がかなり前に行われていて、すでに調達した資金は使ってしまいましたよ!なんて場合は考慮するのが通常です。お金が使われている以上、Convertible NoteやSAFEによって調達されたお金は現時点での会社のValuationに反映されている、そうであればConvertible NoteやSAFEが転換される株式数も考慮して株式1株あたりの価値を算出するのが公平でしょ、というのがその理由です。

事案によっては、「全部使っていない」とか「結構残ってる」とか微妙なものもあるかと思いますが、そのあたりは交渉ごとだと思います(正直、考慮に入れることのほうが多いと思いますが)。今回は、「発行から半年くらい経ってるし、お金は使い切ってるでしょ!」という前提で考えています。それが、「$10M including (i) Note/SAFE conversion」の意味になります。

そうなると、次にやらなければならないのは、「一体Convertible NoteとSAFEがいったい何株に転換されるのさ?」という計算だということになります。これが分からないと、②分母に何を足してよいのか分からないですからね。

この計算の基本的な考え方は、Series Aの1株あたりの発行価格を求める時と同じ発想で、

①会社のその時点でのValuation÷②その時点の会社の株式数

に基づいて計算することになります。

この計算をしているのが、「Bridge Note & SAFE」のH行から右側です。

今回のConvertible Noteは、いずれも20%のDiscountと$2MのCapが付いていて、 SAFEの方にはいずれも20%のDiscountと$4MのValuation Capがついています。で、Pre-money Valuationは$10Mということで、いずれのValuation Capも上回っていますから、転換される株式数を計算するにあたっては①にはValuation Capの数字を持ってくることになります。

次に、②に何を持ってくるかという話になりますが、こちらはConvertible NoteやSAFEの定めに従うことになります。今回は、

「典型的FDC(転換価格の計算に当たって、Available Option Poolもすべて分母に含めるが、転換されるNoteや他のConvertible Securityは含めない)」

となっていますので、②として考慮すべきは、発行済株式(900万株)、付与済みStock Option(35万株)のほかに、Available Option Pool(65万株)となります。

さらに今回は、Available Option Poolを15%にするよう要求されていて、それをPre-moneyに含めるよう要求されている(=Series Aの実行前にAvailable Optionを増やしておく必要がある)ことから、上で算出した増やすべきOption Pool分1,905,902株を加えてあげる必要があります。

というのも、Convertible NoteやSAFEが転換されるのは、あくまでSeries Aの実行時であって、その時点ではすでにSeries A実行後に15%となるようにOption Poolが増やされているはずだからです。ということで、増やす必要のあるStock Option Poolも転換価格を計算する際の②として考慮することになる結果、②は合計で11,905,902株という計算になります(B8)。

 これで、Convertible NoteとSAFEの転換に必要な数字はすべてそろいましたので、後は計算するだけです。

「Bridge Note & SAFE」の「Conversion Price」の欄は、「①Valuation Cap÷②11,905,902株」という計算で得られた数字が記載されており、株式数の欄は、「元本(及び利息)÷Conversion Price」で得られた数字が記載されています。

ちなみに、Convertible Noteのほうは、株式がSeries AとCommon Stockに分かれていますが、これは、今回のNoteが「Discount部分をCommon Stockで交付する」タイプのNoteという前提に立っているためです。

つまり、転換される総株式数を「元本(及び利息)÷Conversion Price」の算式で求めた上で、さらに「元本(及び利息)÷通常のSeries Aの発行価格」という計算を行い、この計算で得られた数字分(今回で言えば「Series A」の欄に書かれている数字)だけSeries A株式を発行することとし、残りの株式は普通株で発行するということです(このような仕組みを取ることもある理由については、コチラをどうぞ)。

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これでConvertible NoteとSAFEの転換によって発行される株式数が判明したわけです。

それによると、Converitble Noteは1,549,429株に、SAFEは744,119株に転換されるようですので、その合計である2,293,548株分を、②分母に加えることになります。

ということで、戻り戻って②分母(B9)は、

900万株+35万株(Outstandin Option)+65万株(Available Option Pool)+1,905,902(Available Option Poolの増加分)+2,293,548株(Convertible NoteとSAFEの転換分)=14,199,450株

ということになります。

すんごい長旅でしたが、これにてようやくSeries Aの1株あたりの価格を出すために必要な数字が全部そろったわけです。ようやくゴールが見えてきました。

いままで頑張って計算してきた数字を、

会社のその時点でのValuation ÷ その時点の会社の株式数

に当てはめると、

$10,000,000÷14,199,450株=$0.70425

とういことで、Series Aの1株あたりの価格は$0.70425になることが分かりました。

あとは、新たに投資される額($2M)をこの価格で割ってやればすぐに新たに発行されるSeries Aの株式数は出てくるわけで、Cap Tableによると、2,839,900株が新たに$2Mを投資する人に発行されることになり(K25)、Sereis Aがクローズした後の完全希釈化ベースでの株式数は、Convertible NoteやSAFEの転換によって発行される株式と「Series A後に15%」という要望を実現するために増やしたAvailable Option Poolの数を合計して、17,039,350株ということになります(O33)。

さて、ここまで来て一応の答えが出たところで最後に問題となるのが、「これまでの計算、本当にあってるの?」という点です。

このようにして得られた数字が正しいのかを確認するのには、実は結構手間がかかるのですが(苦笑)、ひとつの目安として、①Fully Diluted Basisでの新規投資家の持分割合と②Available Option Poolの割合を見ることをお勧めします。

まず①ですが、Pre-money$10Mで$2M入れるということは、投資実行後の持分は$2M/$12M=16.67%となるはずです。で、New Investorの持分割合を見ると、無事16.67%となっているので(P24)、とりあえずほっと一息つけるわけです。

次に②ですが、要するに、「Series A後に15%」という要望を満たせているのかを確認する作業です。Available Option(P29)とAvailable To be Increased(P30)を足してみると、無事15.00%になっていますので、これまた一安心できるわけです。

どこかで計算ミスをしていたり、考慮すべきものを考慮していなかったりすると、これらの2つのポイントが想定と違った数字になることがよくあります。そんな時は、今一度、考慮すべきものを考慮しているのか、あるいは余計なものを考慮しないか等を最初から順を追って確認していく必要があります。

ただ、注意しなければいけないのは、「逆は必ずしも真ならず」ということです。

つまり

「これらのポイントが想定どおりの結果だったからといって、計算が正しいとは限らない」

という点です。これを言ってしまうと元も子もないのですが、いくつか計算ミス等が重なった結果、運よく2つのポイントについて想定どおりの数字が出てしまうといったとっても愉快な事態も往々にしてあります(笑)。

なので、上記の2つのポイントは、あくまで参考にとどめておいて、まじめにもう一度計算ミスがないか順を追って確認するというのが王道ですかね。大変だけど。

最後に補足(というか蛇足)ですが、上記の通りばーーーっと一直線に計算方法を書いてきましたが、実は、実際の計算は一直線ではありません。

お気づきの人もいるかと思いますが、「Series A後に15%」を実現するためにいくらOption Poolを増やせばいいかという点は、決して途中で答えが出てくるものではありません。だって、Series A後の出来あがりの数字が分からないと、15%を実現するためにいくら増やせばいいかなんて分からないですから。そして、この増やすべきOption Poolの数が分からないと、Convertible NoteやSAFEの転換によって何株発行されるのかという点も分からないことが多いですし(条件次第ですが)、Series Aの1株当たりの発行価格も計算できません。このように、「Series A後に15%」という条件は、いろんなところに影響してくるわけでして、これのおかげでエクセル内で計算がぐるぐる循環しているわけです。そのため、この手のCap Tableは、結構壊れやすくなっている傾向にあります。

ということで、最後に何を言いたいかというと、こまめに(極端になことを言えばワンステップごとに)「Ctl+S」でセーブして、苦労が泡と消えることのないように気をつけましょう。何が一番辛いって、頑張って作ってたのにふとしたことで壊れてしまい、初めの一歩に逆戻りというパターンです(もし壊れない方法、壊れた後に簡単に修復する方法をご存知の方がいたら、教えてくださいませ!)。

ということで、長ったらしくだらだら書いてしまいましたらこれにて終了です。

こんなに長くなるとは思わなかったので自分でもびっくりです。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

今週もあっという間に終わってしまいましたね。みなさん、良い週末をお過ごしください!!!

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