日本企業のアメリカ進出 ~よくあるQ&A(その1)~

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

新年早々にポストしよう!と思いつつ、気付いたらもう15日。。。もう1/24年が終わってしまいます。「今年はブログをしっかり書き続けるぞ!」と決意して迎えたはずなのに初っ端からこんな感じで恐縮ですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、早いもので、2014年9月にWilson Sonsini Goodrich & Rosatiで勤務を開始してから1年4ヶ月が経ちました。

その間、日本で「シリコンバレー」が沸騰していることもあって、アメリカ進出(というか、シリコンバレー進出)に興味のある日系企業の方にたくさんお目にかかりましたし、実際に、そのお手伝いを法律面からサポートさせていただく機会にも多く恵まれました。

これは波多江と小川も一緒らしく、昨年7月に日本に帰ってから、アメリカってどうやって進出するのさ?VISAってどうやって取るのさ?といったご質問を、関係各所からいただいているようです。

せっかく皆様からそんな機会をいただきましたので、これから適宜、「アメリカ進出に関してよく聞かれる質問」というテーマで、まとめていきたいと思います。

今回はその第一弾で、よく聞かれまくる質問をQ&A形式でまとめなおしてみました。

普段のStartupネタとはちょっと毛色の違うポストですが、普段のポスト(滞りがちですが汗)と併せて、お読みいただければ幸いです。

Q1.    日本企業によるアメリカ進出の方法って、どんなものがあるの?

日本企業のアメリカ進出の方法には、大きく分けて、

 ① 事務所を置かずに、とりあえず人を送り込む方法(短期・長期の出張)
 ② 事務所を置いて、限られた範囲内で活動する方法(いわゆる「駐在員オフィス/Rep Office」)
 ③ 日本の会社を外国法人として登録した上で、日本の会社として活動する方法(いわゆる「支店」)
 ④ 現地法人を作ったうえで、現地法人として活動する方法(いわゆる「現地子会社」)

の4つがあります。

①は、当たり前ですが、最も単純で、最も手間がかかりません。短期出張であれば、Visa Waiver Program(いわゆるESTA)を使って来る方が多いと思いますし、長期出張や繰り返し出張する場合には、出張ビザ(B-1Visa)を取得してくる方も多いと思います。ただし、これらのVisaでは、会議出席や契約交渉、報酬を得ない取引等は行えるものの、米国企業から報酬を受け取る活動ができないなど、できることが限られていますので、注意が必要です。Visaの話は、また別の記事にて。

②③④は、とてもメジャーな方法ですが、②と③は、アメリカで活動する会社はあくまでも日本の会社であるのに対し、④は、日本の会社はあくまで親会社として君臨(?)しているだけで、活動するのはアメリカの会社ということになります。

Q2.    駐在員事務所って、いったいナニモノ?

駐在員事務所は、その名の通り、「駐在員」がいる「事務所」になります。

「アメリカに進出しているどの企業にも『駐在員』っているし、『事務所』もありますがな!」というツッコミが容易に予想されますが(笑)、「現地法人」と違って、駐在員はかならず日本の会社に雇用されてますし、事務所も日本の会社(日本の会社が所有していたり、賃貸していたりする)のものです(なぜなら日本の会社しか存在しないから)。その点では「支店」の場合と変わりませんが、「支店」と違って、「駐在員事務所」には、アメリカでやって良いことにかなりの制限があります(続きは【Q.3】にて)。

Q3.    駐在員事務所って、何ができるの?「支店」と何が違うの?

この手の質問に対する回答として、よく「駐在員事務所では、登録(登記)が不要だけど、できる活動に制限がある。支店は、登録(登記)が必要だけど、そのような活動に関する制限は一切ない。」といった説明が見受けられます。

この説明は、まあだいたいあっていますが、必ずしも正確ではありません。そもそも論として、そんな正確な説明を欲している人がいるのか?という疑問はありますが、ちょっとトリビア的に掘り下げてみます。

そもそも、「駐在員事務所」という用語は、日米租税条約の規定を基に日本人が勝手に作った概念でして、日米租税条約内にある「日本の企業については、アメリカにある『恒久的施設』(Permanent Establishment)にあたるものを通じて利得をあげなければ、アメリカで連邦税を払わなくてもいいですよ」というルールを踏まえつつ、その「恒久的施設」にあたらないものを勝手に「駐在員事務所」と呼んでいるに過ぎません。

で、どんなものが「恒久的施設」にあたるのかなと思って日米租税条約を見てみると、第5条2項に、「(a)事業の管理の場所」、「(b)支店」、「(c)事務所」などと列記してあって、おいおい「事務所」もあたるんかいなと、いきなり出鼻をくじかれることになるわけです。

ただ、これには例外が設けられていまして、以下の活動に限られる場合には、「恒久的施設」にはあたらないとされています。
 (a)企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
 (b)企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
 (c)企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。
 (d)企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
 (e)企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
 (f)(a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

ですので、「情報収集をさせるために事務所を設けて人を送り込む」なんて場合には、(e)に基づいてその事務所は「恒久的施設」とはみなされず、その事務所があることによってアメリカで連邦税が課されることもなくなることから、晴れて「駐在員事務所」の称号(?)を得ることができるわけです。

他方で、「支店」については、外国法人が州内でビジネス上の取引を行う(Transact Intrastate Business)ためには登録が必要になりまっせ!というルールを各州が定めておりまして、このルールに基づいて登録が必要になるような事務所を、これまた日本人が勝手に「支店」と呼んでいるに過ぎません。あくまで各州の登録ルールに基づいたものであるため、租税条約とはまったく関係がなく、したがって、租税条約から派生している「駐在員事務所」という概念ともまったく関係がありません。

そもそも、物理的に「支店」がなくても、ある州にて、その州が「Transact Intrastate Business」に該当する活動を行おうとするのであれば、その州において外国法人としての登録が必要になるわけです。ですので、アメリカに事務所を一切持っていないのに外国法人として登録されているなんていう事例も、もちろんあります。たとえば、東証一部上場のぐるなびさんも、公開情報を見る限り、アメリカ・カリフォルニア州に営業所等は持っていないようですが、カリフォルニア州に外国法人として登録されています。

ということで、話がややこしくなってきましたが、アメリカでは、「駐在員事務所だから、登録が不要、だけど活動が制限されている」、「支店だから登録が必要、だけど自由に活動できる」という単純な整理がなされているわけではなく、「租税条約上の一定の活動しかしないのであれば、アメリカの連邦政府から税金を課されない」というルールがあり、それとは完全に独立するものとして、「州内で一定の活動をする場合には、その州のルールに従って登録が必要で、州に税金を払う必要がある」というルールがあるという整理になります。

そのため、「『駐在員事務所』に過ぎないから『支店』として登録が不要だ」という一直線な理解は、必ずしも正しくないということになります。実際には、

「駐在員事務所=恒久的施設にはあたらない事務所」

↓そして

「Transact Intrastate Business」をやらないから登録も不要」

という関係が成り立つ可能性がかなり高いのですが、

「駐在員事務所=恒久的施設にはあたらない事務所

↓だけど

「Transact Intrastate Business」をやるから登録が必要」

というパターンも、理論的には考えられます。

例えば、租税条約上、「企業のために物品若しくは商品を購入することのみを目的」とした「事業を行う一定の場所」は「恒久的施設」にあたらないとされているため、単なる買付け用の出先事務所のようなものは、「恒久的施設」にあたらないものとして、米国連邦政府からは税金を課せられることはありません。しかし、例えばカリフォルニア州では、「180日以内に完了する単発取引で、同種の継続的かつ多数の取引の過程で行われるものではないもの」は登録不要とされているものの、そうでない取引を行うには登録が必要とされていますので、「企業のために物品若しくは商品を購入すること」が目的だったとしても、その購入が継続的であるような場合(たとえば、買付けを主に担当する事務所)には、カリフォルニア州で登録が必要になる可能性があります(「可能性」と書いたのは、裁判所が判断するにあたっては、周辺事情が色々考慮されるからです)。

ということで、「駐在員事務所は何ができるのか?」という問いに対する答えとしては、「やろうと思えばなんでもできます。ただし、租税条約に規定されている活動に限定していないと、連邦税がかかることになります。また、活動の内容によっては、州に登録が必要になり、州税もかかります。」という、なんとも歯切れの悪い、微妙な回答になります。

01162016

Q4.    州に登録が必要になると、何かデメリットはあるの?

僕の実務地がカリフォルニア州であるため、カリフォルニア州での登録という前提で説明させていただきます。

まず、当然ですが、登録料が必要になります。カリフォルニア州では、この登録料は$100とそれほど高くないのですが、登録を行うためには、カリフォルニア州に住所を持つAgentと呼ばれる人(州から税金関係の通知を受けたり、訴状の送達を受けたりする人です)を選任しなければなりません。このAgentには、社員の方だけでなく、極端なことを言えば友人・知人でもなれるのですが、適当な人が見つからない場合には、Agent Serviceを提供している業者に依頼することになります。この業者に支払う年間のAgent料が通常$100から$200くらいかかります(業者によって違います)。また、登録書面のファイリングも、サービス業者を使って行うことが多いため(郵送や持込でもできますが、時間がかかります)、その分のサービス料も取られます(これも業者によって違いますが、大体数100ドルです。)

このような初期費用に加え、

  • 毎年、Statement of Informationを提出しなければならない($25)
  • 初年度以降、最低$800のFranchise Taxを支払わなければならない

といった費用も生じます。

ということで、カリフォルニア州に登録すると、年間$1000程度は維持費がかかる計算になります。意外と高いですね。

Q5.    州に登録が必要なのに登録をしないと、何かデメリットがあるの?

いくつかデメリットがあります。登録制度は、各州でちょっとずつ異なっているのでやっかいなのですが、大体以下のようなデメリットが定められています。

その州の州裁判所に原告として訴えを提起できない。
登録が必要なのに登録をしていない場合、その州にある州裁判所に訴えを提起することができません。ですので、「取引の相手方が不義理を犯した。けしからん!」という場合でも、訴訟を提起できない可能性があります。具体的には、訴えを提起しても、相手から登録がない点をDefenseとして主張され、却下においこまれる可能性があります。

州内での裁判所で被告として訴えを提起される。
「ということは、逆にこっちが不義理を犯しても、相手方は州裁判所に訴えを提起できないの?うへへ。」と思ったチョイ悪なあなた(?)、残念ながら、訴えは提起されますし、適法に被告になってしまいます。例えば、カリフォルニア州の会社法は、未登録のままビジネスをやってしまった(transacting unauthorized intrastate business)をしてしまった外国会社は、カリフォルニア州裁判所を管轄裁判所とすることに同意したものとみなしますよ!という規定を用意していますので、しっかりと被告にはなれるわけです。

罰金
法律違反ですので、多くの場合、ペナルティが課されます。カリフォルニア州の場合、「unauthorized intrastate business」を1日やるごとに$20の罰金が課されるとされています。ちりも積もれば山となる。結構取られますね。

刑罰
外国会社が未登録であることを知りつつ、その会社のためにビジネスをやってしまった個人(オフィサーや従業員等)も、とばっちりを受ける可能性があります。カリフォルニアでは、そんな個人に対して、$50以上$600以下の罰金が課せられることになっています。

Q6.    州に登録が必要なのに登録をしないと、契約が無効になってしまって本当?

さすがに無効になることはありません。未登録でやってしまった契約等の効力は妨げられない旨が定められています。

Q7.    駐在員事務所でも、VISAはしっかりでるの?

駐在員事務所に対してVISAの発給を禁止するルールはないため、一般論としては、駐在員事務所でも、VISAは出ます。

例えば、L-1 Visaも出る可能性がありますし、E-2Visaも出る可能性はあります。が、感覚としては、駐在員事務所の場合、Visaが出るかは、正直かなり博打に近いところがあるといいますか、少なくとも法人や支店(ブランチ)の場合と比べてハードルが上がるのは否定できません。やはり、「しょせん駐在員事務所で、やることも限られてるのに、いったい何するのさ?本当にアメリカに貢献してくれるの?」という疑問がふつふつと湧いてくるからではないかと思います。このほか、実際上、審査官も、会社を設立した上での書類(例えば株式関係書類)に慣れていて、会社形態を前提とした手続の方がスムーズだというのも感じるところです。

また、例えば新規進出のL-1ビザの場合、ビザが出ても最初は1年間限定で、1年後に更新の審査を受けることになりますが、この審査が近年厳格化していると言われています。ずっと駐在員事務所のままだと更新がなされないリスクが高く、結局のところ、近い将来法人化等により駐在員事務所から脱却しなくてはならないということで、駐在員事務所の形態をとるメリットはあまり大きくないと言うこともできます。
Visaのお話については、あとで詳細にやっていこうと思います。

Q8.    Zen SquareDG717等々に日本企業の従業員が「派遣」されているみたいだけど、あれって何なの?

いくつかパターンがあります。

よく見られるパターンは、日本企業が場所を間借りして、そこを事実上の駐在員事務所又は支店という位置づけにした上で、従業員を派遣するというものです。

例えば、インキュベーターとして有名なPlug&Playには、多くの日本企業さんが入っていらっしゃいますが、これは、各企業さんが、Plug&Playから場所を借りて、そこを本拠に活動しているだけの話です。同じようなことは、Zen Square、DG717等でも行われています。この場合、派遣されている人は、あくまで派遣元の業務を行うことがミッションです。場所の提供者やその関係者から、いろいろとアドバイスをもらえるかもしれませんが、あくまでそれは自社の業務を行うためのサポートでしかありません。

他方で、派遣元の業務を行うのではなく、例えば、「Venture投資に精通しているScrum Venturesさんの下で、Scrum Venturesさんの仕事をしながら、先端実務を学びたい!」なんていう要望もある場合があります。このような場合、所属先の企業からE-2なりL-1なりのVisaを出してもらってScrum Venturesで働くといったことは基本的にできません。なぜなら、E-2なりL-1は、雇用と結びついていて、雇い主のためにしかアメリカで就業できないからです。

じゃあどうするか。

この場合、超正攻法としては、ScrumさんにOffer Letterを出してもらって雇用してもらい、H1BVisa(専門職の就労Visa)を取得してScrumさんで働くという方法がまずひとつ。これじゃ単なる転職じゃないかという話もありますが、それをさておいても、これってあまり便利ではありません。H1BVisaは、毎年限られた期間しか申請を受け付けていませんし、発行数も年間で決まっています。しかも、最近、アメリカの景気が良いせいで、H1BVisaの申請が急増しており、抽選に通らないと審査すらしてもらえないという事態になっています(去年は約3倍の倍率でした)。しかも、Scrumさんからみても、「専門職」前提でそれ相応の給料を支払わなければならないので、負担が大きいです。

で、次によく使われるのが、J-1Visaをとって、トレイニーなり、インターンなりとして研修を積むという方法です。J-1は、数多あるVisaの中では比較的とりやすいVisaですし、インターン先で適法に研鑽を積むことができますので、嘘偽りなく上記の要望をお持ちの方にはお勧めできる方法です。ただ、期間が最長で1年半だったり、ちょっとした制約があったりするのがネックではあるのですが。まあそれはほら、研修ですからね。うん。

ほかにも、B-1Visaで頑張っていらっしゃる人がいるとか、実はESTAで頑張ってますという人がいるとかいないとか聞いたこともありますが、違反がバレたときに被る不利益があまりにも大きいので、、、どうなんでしょう。おっと、残念。もう紙面がないや。このあたりは、ゴニョゴニョゴニョ。

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今日のところは、ここまでということで。

当初、「よくある10の質問」的な形で1回ものにしようかと思っていたのですが、よく聞かれることをピックアップしてみると、、、出るわ出るわ、質問のヤマ笑

ということで、地味な内容ですが、興味のある方も一定数いらっしゃると信じて、ちくちくシリーズを続けていきたいと思います。

みなさん、良い週末をお過ごしください!!!

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