Startupの資本構成(Capitalization Structure)に関するアレコレ(3)~Par ValueとPer Value~

今日は軽めの内容です。

「Par Value」と「Per Value」、違いは2文字目が「a」か「e」かだけですが、ぜんぜん違うものですよというお話です。当たり前といえば当たり前なのですが、お付き合いくださいませ。

Par Valueというのは、Certificate of Incorporationのところに出てくる概念でして、日本語に翻訳すと「額面」です。

日本にも、一昔前は「額面株式」(株券に1株あたりの払込金額が記載してあるもの)というものありましたら、2001年に廃止され、今は無額面株式しかありません。

他方で、アメリカ(ここではデラウェア州)には、もちろん無額面株式(No Par Value)もあるのですが、額面株式もしっかり存在しています。

で、その「Par Value」がいったいどんな役割を果たしているのさと言いますと、よく言われることには、「会社がその価格未満では株式を発行できなくなる」、つまり、株式の最低発行価格を定めているのだ!というものがあります。ちなみに、Par Valueは、株式の種類ごとに定めることができるとされていまして、このことから、「ある種類の株式について額面を定めることで、投資家からすると、その額以下では将来その種類の株式は発行されないということを意味するから、投資家の保護に一役買っているのだ!」といった説明がなされることもあります。

もちろん、これはこれで正しいのですが(デラウェア会社法153条(a)にも「Shares of stock with par value may be issued for such consideration, having a value not less than the par value thereof…」としっかり書いてあります)、だいぶ前にお話したとおり、Par Valueは通常、$0.01とか、$0.0001とか、さらには$0.00001(WSGRでの実務では、よくこれを使います)とか、超がつくほどの少額に設定しますので、「Par Value以下では発行できませんから、投資家さん、安心してください」なんて言ってみても、ほとんど意味がないわけです。

じゃあなんでわざわざPar Value付きで株式を発行するのさ?別にNo Par Valueで発行してもいいんじゃないの?と思われるかもしれません。

が、し・か・し。

Par Value付きで発行することには、会社のFranchise Taxを減らすことができるという重要な意味があります。

すなわち、前々回の記事で説明したとおり、デラウェア州のFranchise Taxを計算する方法には、発行可能株式総数をベースに計算する「Authorized Shares Method」という方法と、会社の資産価値を基に計算する「Assumed Par Value Capital Method」という方法の2種類があるのですが、実は、株式がNo Par Valueだと、後者の計算方法を利用できません。なぜなら、後者の計算方法は、Par Valueをひとつの基準にしながら1株あたりの推定価値を算出する方法だからです(詳しい計算方法を知りたい方はコチラ。英語ですが)。

となると、No Par Valueの会社は、強制的に前者の計算方法を利用してFranchise Taxを計算しなければならないのですが、発行可能株式総数を最初から1000万株とか1500万株に設定する「シリコンバレー方式」に従うと、Franchise Taxが初年度から$75,175とか$112,675とかいう莫大な額になってしまい、いきなり税金を払えないという笑えない事態に発展します(苦笑)。

ということで、シリコンバレー方式の発行可能株式総数を採用することを前提にすると、Par Valueを設けることは、税金対策として必須ということになります。

さらに進んで、じゃあなぜ$0.001とか$0.00001といったごく少額にPar Valueを設定するのかと言うと、これには大きく2つの理由があります。

stanford

ひとつめの理由は、たとえば$1とかに設定してしまうと、それ以下の額では株式を発行できなくなってしまうということが挙げられます。創業者に対して発行する株式のPar Valueを$1に設定していると、創業者が仮に800万株引き受けた場合には、なんと$800万も支払わなければなりません(汗)。これを$0.001とか$0.0001とか0.00001とかに設定しておけば、$8,000とか$800とか$80で済むわけでして、ようやく現実的な数字にたどり着くわけです。また、Series SeedやSeries Aでは、1株あたり$1以下で株式を発行するのが通常ですので、Par Valueを高い価格に設定してしまうと、そもそも資金調達ができなくなってしまう、それはどう考えても困る(あたりまえですね)、というのが第一点。

二点目は、やはりFranchise Taxとの関係です。Par Valueを高く設定してしまうと、「Assumed Par Value Capital Method」で計算されるFranchise Taxの額が高くなってしまうのです。

例えば、会社の資産額が$10,000、発行済株式総数が1000万株、発行可能株式総数が1500万株の会社があると想定した場合、

Par Value$1に設定  Franchise Tax$5,250

Par Value$0.1に設定  Franchise Tax$700

Par Value$0.01に設定  Franchise Tax$350

と、驚くほどの差が生じます。

ということで、Par Valueは低く低く設定しましょう、とこうゆうワケです。

税金との関係では、Par Valueを$0.01に設定しておけば最低価格を確保できるように思いますが(※厳密に検算したわけではありません)、$0.01で数百万株引き受けるとなると、結構な金額(数万ドル)になってしまいますので、通常はもっと低めの額に設定することになります(WSGRでは、特段の事情がない限り、$0.00001をお勧めしています)。

以上がPar Valueのお話。

で、次にPer Valueですが、これは、単純に、「一株あたりの単価」、「一株あたりの購入価格」を意味しているだけです。このPer Valueは、Par Value以上であれば、いくらでも問題ありません。例えば、Par Valueを$0.00001に設定している会社でも、最初にある程度まとまったお金を入れておきたいので、創業株を1株あたり0.001株で発行する(=Per  Valueは$0.001)ということは、たまに行われています。

「Par ValueとPer Value」なんて大げさな題名にしておきながら、Per Valueについては、このくらいしか語ることがありません(汗)。

ということで、なんだかものすごくPar Valueよりのバランスの悪い記事になってしまいましたら、今日のところはここまでということで。

ちなみに、この記事ではデラウェアのFranchise Taxをたくさん計算していますが、計算自体は、素晴らしいエクセルシートをデラウェア州が提供してくれているおかげで、数字を入れれば一瞬で完了します。別に僕が計算が得意だとか、そうゆうわけではありませんので、あしからず。

あっというまに週末ですね。みなさん、良い週末をお過ごしください!

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