Uberのピンチ?

久しぶりの更新です – バタバタが続きすっかりご無沙汰になってしまいました。

今日は、シリコンバレーを賑やかしている「Uberの運転手はIndependent ContractorではなくEmployeeです」というニュースについて。

米国時間の昨日から本日にかけて、NY TimesやReutersを初めとする大手メディアのヘッドラインに「カリフォルニア州の行政が、Uberの運転手は(Uberが主張するような)Independent Contractorではなく、Employee、つまりUberの従業員だ、と判断した」というニュースが踊りました。これって本当にそのように扱うことになると、おそらくUberのビジネスの根幹を揺るがす大事件になります。

つまり、仮にUberドライバーたちがUberのEmployeeだということになれば、Uberは様々な「従業員を雇っていること」に付随して発生する様々な義務を果たさなければならないからです。このニュースについて少しだけ深掘りしてみたいと思います(といっても筆者は、米国法はもちろんのこと、日本法においても労働法の専門家ではありませんのでご注意ください。GSWの優勝で絶頂を迎えているステファン・ハタエ選手がそのうち詳細を教えてくれるはずです)。

なお、最初に申し上げておきますが今回の判断はカリフォルニア州の労働法を運用する行政機関が下した判断であり、裁判所が示した判断ではありません。日本でも公正取引委員会が独禁法違反かどうかを審決することがありますが、そんな感じのものであり、権威があり尊重されるべき考えの一つではあるものの、最終的な判断ではありません。イシューは法令の解釈だけに、最終的には裁判所の判断を待つ必要があります(なお行政の判断にも不服申立てができるのが近代国家の共通原則のため、Uberは早速上級機関に不服を申し立てているみたいです)。例えばUberが行政の判断を無視して「ドライバーはIndependent Contractorだ!」と運用を続け、行政から訴えられたら裁判所でその解釈を争っていく、というような流れになっていくことになるでしょう。上級機関の審査、その結果次第で裁判、という流れを考えると、まだ最終的な決定には時間がかかります

さてさて、厳密にイコールかと言われると自信がありませんが、Employeeは日本で言う労基法上の労働者をイメージするとよいと思います。日本でも、労基法上の労働者に対しては(残業代を払ったりなど)色々な義務が生じますよね。これに対してIndependent Contractor(長いので以下「IC」といいます)は、直接日本に同じ概念がないためイメージしにくいところですが、業務委託先のようなイメージを持って読むと分かりやすいかもしれません。正に、契約によって独立した存在として会社に貢献する人のことを指します。

pinch-uber

まずは基本的なお話として、EmployeeとICはどのように区別されるのでしょうか。米国法においても、EmployeeとICについて明確な定義はなされていません。いずれに該当するかは法令の解釈によりますから、すなわち最終的には裁判所が決めるべき事です。ただ、カリフォルニア州では、ある(会社に対する)サービス提供者が会社にとってどちらに該当するかがイシューになるときは、「当該人はEmployeeであると仮定する(presume)」こととされています(カリフォルニア州Labor Code Sec. 3357)。

ただ、このpresumptionは「rebuttable」−すなわち反証が可能なものとされており、技術的にはUber側が「いえいえ、ドライバーさんたちはICですよ」という反証に成功すれば、晴れて彼らをICとして扱うことができることになります。そして、カリフォルニア州最高裁が示したS.G. Borello & Sons, Inc. v. Dept. of Industrial Relations という事件の判例により、裁判所はこの二者の区別について、細かに具体的事例を前提とした要素考慮によって結論を導くとしていますから(日本でもよくある、●、▲、■等を考慮の上総合的に判断する、みたいなやつです)、結局明確に「こうであればICだよ」と言うのは難しいことになります。

以上の次第ながらも、実は裁判所の視点でも行政の視点でも最重要視されている要素は明確です。それは、

当該サービス提供者のサービス提供を受けている者(それがEmployeeならEmployer、それがICならPrincipalと呼びますが、ややこしいので以下単に会社といいます)は、当該サービス提供者の業務の完成及び方法についてControl(管理)またはRight to Control(管理権限)があるか

という要素です。結局、Uberがドライバーをどれくらい管理しているか、ということが重要になるということです。ルールがどうなっているかという問題(も重要ですが)というより実態がどうかが重要な話のため、この点は正直よく分かりません。おそらくUberの弁護士さんもかなり気合いを入れてこの点については立証したと思いますが、ちょっと見てみたいですね。

このほかの考慮要素としては以下のような諸点が挙げられたりしています。括弧内はUberに照らした場合のつぶやきです。

1 当該サービスと会社業務は明確に区別されているか(Uberの業務をどう考えるか次第ですかね〜)

2 当該サービスは会社の通常業務かどうか(Uberでは通常業務ですね)

3 会社はサービス提供者に対して仕事をするための道具や場所を提供しているか(Uberでは車は各ドライバーの個人車ですので当たりませんね)

4 サービス提供者がサービス提供のために行う投資(Uberドライバーになるためには車を自分で買わないといかんですね)

5 そのサービスは特別な技能を要するものか(運転…と考えると要らないようにも思えますが、人を安全にご希望の場所まで「ご案内」する、というと要るような気もしないでもないようなゴニョゴニョ)

6 当該地域では、当該職業について、当該サービスは通常会社の指示に基づいて行われているか、監督されずに行われているか(タクシーと比べると…)

7 スキル次第でサービス提供者の得る報酬は変動するか(運転スキル、という意味では関係ないような気もするし、いやいや☆5つのドライバーしかイヤだという人もいるだろうから機会損失が発生しているのかもしれないし…)

8 サービス提供の時間(個人の自由?もちろん安全面から考えて限界はあるでしょうが。)

9 会社とサービス提供者の業務上の関係の度合い(たっくさんいますからねぇ、ドライバー)

10 時間給か、固定給かなど報酬支払いの方法(これは時間給というか歩合給ですね)

11 当事者の認識(基本的にはUberもドライバーもEmployeeとは思っていないんでしょうね)

とまあ徒然なるままに見ていくと、うーん、微妙な感じですね。。。まぁ細かい労働状況が分かりませんから、最重要要素である管理・管理権限のところがそもそも把握できないのですが、高裁レベルの判決ではあるものの「仮に管理がなくても、①会社がオペレーション全体についてpervasive controlをもっている、②サービス提供者の義務はオペレーションの不可欠の要素である、かつ③サービスの内容は細かな管理を必要としない、の3要件を満たすときには、Employeeになっちゃうよ」的な判決もあり(Yellow Cab Cooperative v. Workers Compensation Appeals Board)、なかなか多くのハードルがあります。

仮にドライバーがEmployeeだとした場合、法的にはUberはpayroll taxの支払い、最低賃金の縛り、残業代の縛り、法律が要求するご飯提供義務や休憩を与えなければならない義務、経費の精算義務などが課せられることになります。これらの金銭的負担は勿論強烈ですが、それよりもおそらく大変なのは、Uberドライバーは副業としてやっている人が多い」という事実。就業時間外の副業は禁止されていない方々が活用して広がった制度だけに、「副業ではなく兼業ですよ!」と言われてしまうとNGになる人も多いでしょう。と考えるとUberのみならずドライバーもこの判断は喜ばないわけで、、、利用者にとっては(正直)どうでもいいことのような気もしますから、、、喜ぶのは税収が増える可能性がある州とタクシー業界、ってことになるのでしょうか。

ビジネスモデルを破壊する判断になるか、はたまたUberがFavorな判断を勝ち取るか。いずれにせよ、この問題は注視していく必要がありそうです。

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