さて、Convertible Note(CN)の続きです。
前回、CNの転換価格について、「1株あたりの転換価格が高くなればなるほど、転換によって得られる株式数が少なくなる」、逆に、「1株あたりの転換価格が低くなれば、CNの保有者のうま味が増える」という点を強調しました。
今日は、この点をちょっと掘り下げながら、ちょっと分かりにくいDiscount RateとValuation Capについて解説していきたいと思います。
「1株あたりの転換価格が低くなれば、CNの保有者のうま味が増える」、この点をもっとも分かりやすく表しているのが、CNに設定されるDiscount Rateです。
Discount Rateは、次回のSeries Financingの際に他の投資家が引き受ける1株あたりのPreferred Stockの額のナンチャラ%(典型的には80%)の額で元本(と利息)がPreferred Stockに転換されることを意味します。早期に投資した分(=リスクをちょっとだけ多くとった分)だけ、安くPreferred Stockを購入できるということです。
例えば、
元本+利息:$500,000
資金調達時に参加する通常の投資家の1株あたりの購入価格:$1.0
という前提で考えると、
ということで、Disctoun Rateが適用されるCN保有者のほうが、通常の投資家と比べて、少し株式を多く手に入れることができます。
と、ここまではごくごく当たり前のことで、何の難しいこともないのですが、 このDiscount Rateがあるだけでは、CN保有者の守りが万全というわけではありません。
上記の例で、例えば1株あたりの購入価格が$1.6になっていたらどうなるでしょうか。
この場合、 Discount Rateが適用された後の価格はそれぞれ$0.8と$1.28になりますので、、、
ということで、1株=$1の場合と比べて、大幅に株式数が減ってしまうことになります。
この場合も、もちろん、通常の投資家と比べて2割引の価格で株式を取得できますので、その点では守れているのですが、資金調達時の1株あたりの価格が当初想定していたよりも上がってしまった場合、想定した数の株式に転換されないことが起こり得るわけです。
じゃあ、この1株あたりの価格はどうやって算定されているのかというと、
資金調達直前の会社自体の価値(Valuation)/資金調達前の株式数
という算式になります。
で、資金調達前の株式数は基本的には変わりませんので、1株あたりの価格に大きく影響するのは、Valuationということになります。
つまり、CNでお金を貸してから次の資金調達までの間に、会社のValuationが想定していたよりもべらぼうに上がってしまったような場合には、CN保有者が当初想定していた数の株式を取得できなくなるというわけです。
こんな不測の事態をどうにか避けなければならん、さてどうしよう・・・ということで登場するのが、Valuation Capです。
要は、
CN保有者との関係で、会社のValuationの上限を固定してしまえ!
と、こうゆうわけです。
例えば、発行済株式総数がストックオプションを含めて10,000,000株に対して、CN(80%のDiscount Rateのみ)を使って$500,000(とりあえず利息は無視します)を入れた場合に、資金調達時のValuationによって転換される株式数がどのように影響を受けるかというと・・・
という感じになり、会社の価値が上がれば上がるほど、CN保有者が取得できる株式数がどんどん減少してしまいます。
しかし、投資家の方で、「次回の資金調達の際のValuationは、多く見積もっても$8M程度だろう」と考え、80%のDiscount Rateとともに、Valuation Capを$8Mに設定しておくと、CNは、80%のDiscount Rateで計算した1株当たりの価格とValuationを$8Mと仮定して計算した1株あたりの価格のどちらか低い方の価格で転換されることになります。
具体的には、
という結果となり、赤字の低い転換価格の方が適用されることで、Valuationが高まることによって転換される株式数が625,500より少なくならないようにすることができます。
以上が、かなり単純化したDisctount RateとValuation Capの考え方です。
抽象的に考えていると分かりにくくても、実際に数字に当てはめてみるとスッキリ分かるのではないかと思います。
ということで、スッキリした(と信じています)ところで今日はここまで。
明日はようやく金曜日、皆さん、がんばっていきましょう!!!