Convertible Note/Convertible Equityのキホン(1)

突然ですが、Convertible Noteってご存知でしょうか?SAFEとかKISSって、聞いたことあるでしょうか?

これらは、いずれも、シリコンバレー界隈で主流となっているSeed Financingの手法です。今回以降、適宜これらのSeed Financingのイロハについて解説していこうと思います。

ええ、突然ですね。そりゃもう突然です。前回まで会社設立の話をしていて、これからようやくVesting ScheduleとかCapの話とか、そうゆう重要な話に突入しようとしていた矢先に、なんでいきなりSeed Financingやねんと思われるかもしれませんが・・・ま、いいじゃないですか(笑)。

正直なところを言えば、最近このブログをちょこちょこ宣伝し始めたところ、「SAFEについて解説してほしい!」という要望があったのと、日本の職場であるTMIの上司と元上司から「SAFEって何?解説せよ!」との問い合わせがあったので、早めに書いておこうかなと思った次第です。

で、まず最初にConvertible Noteってナニ?というと、一言で言えば、「将来的に株式に転換されるかもしれない借金」のことです。あくまで借金ですので、もちろん返済期限(Maturity Date)がありますし、利息もつくのが通常です。それから、借金ですので、州によっては、貸し手側に各種の規制が存在する場合があり(日本の貸金業法のようなものです)、そのため、1年に何回もお金を出せないなどといった場合も存在するようです。

次に、SAFEというのは、もちろん「安全」…ではなく、「Simple Agreement for Future Equity」の頭文字をとったものです。

で、KISSというのは、それはもちろんそのまんまの意味でして、

「接吻(せっぷん)」

・・・ハイ、オヤジですいません。

改めまして「Keep It Simple Security」の頭文字をとったものです。

これらは、著名なAccelerator Programの提供者であるY Combinatorと500 Startupsが開発したもので、まとめて「Convertible Equity」と呼ばれています。こちらはEquityだけあって、借金ではありません。でも、株式でもありません。いったいConvertible Noteとナニが違うのさ?という点については、おいおい説明していこうと思います。

(Wilson Sonsini Goodrich & Rosatiのエントランス)

さて、これらのConvertible Note(CN)やConvertible Equity(CE)がなぜシリコンバレー界隈でのシードマネー調達の主流になっているかというと、日本人的に分かりやすく言えば、要するにこうゆうことです。

「早い、安い、ウマい」

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早い

Preferred Stockで投資してもらう場合と比較して、圧倒的に交渉や事務処理が早いです。

この事務処理の中身として、「Valuationを決める必要がないため、時間が節約できる。」だとか、「株式投資の場合、そのラウンドで投資する人の足並みを基本的にそろえなければならないため時間がかかるが、CNやCEにはその必要はない。」などという説明がよくされているようです。

それぞれの最初の部分、つまり、「Valuationを決める必要がない」とか、「株式投資の場合、そのラウンドで投資する人の足並みを基本的にそろえなければならない」という点は、それはそのとおりだと思うのですが、それだから「時間がかかる」というのはちょっと?が付くような気がします。

まず、「Valuationを決める必要がない」とうい点ですが、よくある成熟したM&A案件のように、Valuation決めるのDDやってValuation Report取って、なんてことやると確かに時間はかかるのですが、Startupの投資に関してそんなことをやるのは、かなり少数派ではないかと思います。

VCの方々のお話を聞いたりすると、むしろ「経験に基づいて、なんとなく合理的なValuationが決まる。」というのが実際のところのようです。

となると、これ、あまり時間がかからないですね。

また、Seed Financeの段階だと、ValuationもへったくれもないようなStartupも多いため、Valuationを決められない、だからCN/CEだとなることもあるように思います。

次に、「足並みうんぬん」の点ですが、株式投資でたくさんの投資家さんが関与する場合であっても、基本的にはLead Investorがすべて交渉し、書面を完成させ、それから「他の投資家さん、こちらでよければ投資をどうぞ」みたいな感じで進んでいくのが通常のため、「足並みをそろえるのに時間がかかる」というのは、ちょっと違うかなという気がします。

仮にご不満な投資家さんが少数いても、そんな投資家さんはとりあえず置いておいてInitial Closingをしてしまい、Second Closing(又はそれ以降)に向けてちょこっと交渉、みたいな感じで進めることも結構ありますしね。

じゃあ、CNやCEが何で早いのさ?というと、それはもう、株式投資に比べて、圧倒的に書面の量が少ないからです。

株式投資ですと、通常のSeries Aであれば、タームシートからして数ページから時に10ページ以上、実際の契約書面になれば、合計で優に100ページを超える量になりますし、もちろん全部英語なので、読破(?)するだけでもかなりのエネルギーを費やします。弁護士側でも、1st Draftの作成に、少なく見積もっても6~8時間程度(1-2年目のアソシエイトが前提です)、ちょっとややこしくなると10時間とか15時間とかかかり、その後の投資家側のレビューや交渉、書面の修正、さらに調印までの管理を含め、かな~〜〜りたくさんの時間を費やすことになります。Series A一歩手前のSeries AAとかであっても、やはり書面は合計で50ページ程度にはなるでしょうか。

それにくらべてCNときたら・・・タームシートは1枚(か2枚)、Noteは2-3ページ、Note Purchase Agreementは5ページ程度と、かなり分量が少ないです。CEもほぼ一緒で、10ページ以内には収まります。その分、文書作成の負担も激減します。極端な話、本当に典型的な条件のCNやCEでしたら、ものの数時間(時には数十分)で全部の書面ができてしまったりするわけです。

ということで、とにかく「早い」。

安い

上記のとおり、CNやCEは、圧倒的に書面の量が少なくて済みます。ということは、必然的に弁護士の作 業量も激減します。資金調達の際の最大のコストは間違いなく弁護士費用ですので(笑)、それを大きく節約できるCNやCEは、調達額もそれほど大きくないSeed Financingにおいては、かなり魅力的ですね。

蛇足ですが、とある本に、「最近、将来のビジネスチャンスを得るために、第1回目のSeries Financingの弁護士費用をものすご~くディスカウントする弁護士も出てきたから、昔はCNとSeries Financingで$50,000くらい費用に差があったのに、今は$10,000以下になっているようだ」といったことが書いてありましたが、ちょっとこれは言い過ぎかなという気がします。もしかしたらそのような水準の弁護士もいるのかもしれませんが、まともにやれば、やはりSeries Financingは$30,000~$40,000はかかるかなという気がします。

それに比べて、CNやCEときたら。。。ねぇ。

ということで、とにかく「安い」。

ウマい

CNやCEは、Seed financingやBridge financingによく使われますが、会社側からすると、向こう数ヶ月から1年(時にはもっと)の運転資金を一時的に獲得することで、現時点のバリュエーションではなく、将来もっと高いバリュエーションで資金調達を行うことができるというメリットを得ることができます。

たとえば、同じ$5Mを調達するにしても、会社のバリュエーションを$30Mと評価して投資を受けるのと会社のPre-money Valuationを$50Mと評価して投資を受けるのとでは、会社の資本構成に対する影響がまったく違います。

前者ですと投資家さんは$5M/$35M=14.29%の株式を取得することになるのに対して、後者ですと投資家さんは$5M/$55M=9.09%の株式を取得することになりますし、Pre-moneyが$30Mのときと同じくらい希釈化してもいいや!と考えるのであれば、プラス$3M強くらい調達できる計算になります。

CNやCEは、「あと少し頑張ればもっと有利な条件で資金調達ができそうだ」といった状況のときに、その「あと少し」の間を乗り切るだけの燃料を会社に与えるもので、首尾よくその「あと少し」を乗り切ることができれば「有利な条件」での資金調達が実現できることになります。

そういった意味で、会社にとって「ウマい」ものになります

他方、投資家サイドからすると、Series Financingに行き着く前に早めにお金を入れることになりますので、投資家はSeries Financingに参加する他の投資家よりも大きなリスクをとっていることになります。

そのため、投資家サイドに対しては、早めにリスクを取ってくれたリスク料(のようなもの)として、Valuation CapやDiscount Rateを通じて一定のプレミアムを付与されるのが通常です(Valuation CapやDiscount Rateがなんたるかについてはコチラをどうぞ)。また、時にはCNやCEの転換が生じるようなSeries Financingが起こる前にM&Aが生じた時には元本の2倍(あるいはもっと)返します、なんてことが書いてあることもあります。

そういった意味で、投資家側の視点からしても「ウマい」。

ただ、この点はリスクが現実化してしまった場合には激マズになるわけなので、投資家側から見てCNやCEが本当に「ウマい」かどうかは分からないんですけどね。現に「早めにリスクをとった割にはリターンが少なすぎるんでない?Discount RateのみのCN/CEなんてけしからん」といった趣旨のことをおっしゃっている投資家さんもいらっしゃいます。その意味で、本当にこの③の説明が的を射ているのかなぁ…なんて思ったりもするのですが、まあそれは結果論ですから。美味しいと思って生牡蠣食べまくっていたら、翌日お腹を壊したなんてことはざらにあるわけですし、よしとしましょう笑

ちょっと長くなってしまいました。今日のところはこのくらいで。

次回以降、このCNとCEに関して、Valuation CapとかDiscount RateとかConversionの算式とか、そのあたらりのことに突入していこうと思います。

 

皆様、良い週末をお過ごしください!!!

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