シリコンバレーの構成要素・10個または11個説

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もはや2か月も前になってしまいましたが、スタンフォード大での”イノベーションとアントレプレナー””シリコンバレーと日本”をテーマにしたパネルディスカッションというか会議に参戦してきました。

  innovation

豪華パネリスト、式次第等はコチラです。

広い意味では日本と米国西海岸の特に若手に刺激を与えて、日米関係をさらにいいものにしていこうというコンセプトです。

どの方の話もほんとうに面白かったですし、パネリストの方々とご挨拶できたのも嬉しゅうございました。

キャッチ―なものとして、1つココに書きますと、元駐日大使のJohn Roos氏の、シリコンバレーの構成要素とでもいうような話が分かりよくて印象的でした。

ちなみにこのジョン氏は、昨年のJapan Society of Northern California Galaというパーティで日米関係の向上に貢献したとして表彰された方で、東北の大震災の際に、トモダチ・イニシアチブをリードしていた方といえば思い出す方もいるかもしれません。

私は幸運にもその表彰の場にに居合わせておりました(チャーリーン弁護士、カーラ弁護士に改めて感謝します)。その際のジョン氏のスピーチは、日米の友情とその重要性を朗々と美しい修辞で述べるもので、私はいたく感銘を受けたものでした。

したがい、私の中でジョン氏は現代のペリーやハリスとでも言うべき準・偉人になっており、そして、時と場合によってはこっちの方がよほど重要ですが、ジョン氏はシリコンバレー最大の法律事務所ウィルソン・ソンシーニの元CEO弁護士であり、個人的には、再会できて光栄だな、しかしトモダチ・イニシアチブってネーミング、ステキ過ぎるな、などと思っていたのであります。

さて、彼のオープニングスピーチは シリコンバレーを構成する10(数えたら11?)の要素 というお話でした。

1  Encouragement of Risk Taking 
2  Celebration to the Entrepreneur (kids are watching) 
3  Mobility of Talent (easy to go to small company and take risk) 
4  Cultural Diversity (immigration, gender) 
5  Risk Capital Availability 
6  Global Outlook from the Outset (education important) 
7  Government Commitment 
8  Corporate Governance 
9  Educational Institution 
10  Viable Exit Strategy 
11  Lawyers, Accountants to help young companies 

順に、リスクをとることの(強い)推奨、成功起業家への称賛、人材の流動性、ダイバーシティ、リスクマネー、スタート時からグローバルな目線(なお教育が重要)、政府の積極関与、コーポレートガバナンス、良い教育機関(≒大学)、現実的かつ魅力的なExit戦略、若い会社を助ける弁護士会計士等、というところです。

墨書して額に入れたいくらいです。

シリコンバレーの分析には、いろいろな人のいろいろな整理があるのだとは思いますが、上記は長年シリコンバレーで弁護士としてスタートアップ支援をし、その後日本にも深く関わった方のまとめであり、我々にとって過不足のない、1つの正解に近い解なのだろうと思います。実際、これらのキーワードの多くが、この日のパネルディスカッションで何度も飛び交っていました。

(この日よく飛び交っていたワードは、Risk-taking mindset, Diversity, Labor Mobility, そしてもちろんRisk Moneyといったところでした。ちなみに起業家は物理的にシリコンバレーにいるべきなのか?というのは最近こちらでしばしば聞かれる話題です。)

この日の会議全体の趣旨に照らし、これら10(11)個を全部日本で実現する必要はないが、どれが適用できて、どれが実現可能か、そしてどれが重要か、考えることが意味のあることである、というメッセージを筆者は受け取りました。

そもそもシリコンバレーのシリコンバレーたる所以は何なのか、会社設立数も特許出願数も平均値くらいなのに、なぜ桃鉄級に莫大な金が投資されているのか。それは筆者ごときが答えるにはあまりにも難しい問題ですが(実際にそれを研究するためにココに来ている人もいるくらいですから)、ここに挙げた要素の組み合わせ、またはこれらの要素から醸し出されるえも言われぬアツイ精神的風土というものが、世界でも有数のものなんだということは、確かなのだろうと感じます。

ところで、このジョン氏のスピーチは、この日の全4部構成のうちの第3部、午後一発目のパートでしたが、Lawyerという単語が出たのはこの時がこの日最初でした。イノベーションとアントレプレナーとはいっても、あんまし弁護士は話題に出てこんのかな、などと思ったりしていた矢先でした。そこで、せっかくなので質問してみました。

「シリコンバレーの法律事務所が スタートアップの基本書類を無料でオンライン公開しているのを見てびっくりしました。多分こんなの日本にはないと思います(注1)。弁護士費用もおそらく比較的安いんだろうし、とても専門化しているのだろうと思います。

スタートアップ支援に関してでいいのですが、日米の弁護士実務を比べたとき、日本の弁護士がもっとできることってなんでしょうか。」

ジョン氏はこれ以上ないくらい真剣な表情でヘタな英語を聞いてくれました。

回答要旨はこちら:

「我々としては、サンフランシスコじゃない、物理的にシリコンバレーにいるということが非常に重要でした。

 そしておそらくさらに重要だったのは クライアントと一緒にリスクを取ることでした。

 ある程度のドキュメントやサポートを無料で提供することに対しては、当然反対意見もありました。

 実際、例えばアップルの案件を受ける前に、20も30も、支払いを受けられないままの案件がありました。」

(でもそれが始まりだったのさ。)

今はいろいろなより洗練された弁護士報酬のあり方があるやに聞いてはいますが、例えばアップルが上場する前とかの話ですから、法律事務所としても相当の気合いだと思わざるを得ないというか、法律事務所自身がシリコンバレーを地で行ってます。

同じくパネリストとして壇上にいたJeffrey Char氏(この方も結構スゴイシリアルアントレプレナーなのです)も続けてご発言(要旨):

「僕も(元)弁護士ですが、シリコンバレーの弁護士は効率性重視ですよね。

 日本の弁護士は、1つの結論に10個の理由を挙げることがあるでしょ。

 そういうのではなくて、スピードと最低限のクオリティ、それが大事なのでは。」

そうなんでしょう。

とりあえず、このブログで竹内選手が書いている、弁護士アドバイスの効率性について、内容の裏が取れました。 

この他、Akiko Futamura氏は特許出願等について弁護士の役割の重要性について言及されました。

注1:その後日本の法律事務所でも一定の基本書類を無償で提供しているところがあることを知りました。知りませんでした。

このパートが終わって、コーヒーブレイク中、無事ジョン氏その他の方々ともご挨拶を済ませたら、数名の参加者(殆ど女性)の方が筆者の席に挨拶しに来てくださいました。

「あなた弁護士なのね、私も弁護士なのよ~」って、その人たちみんな弁護士でした。弁護士多いな、しかしこうやってつながると嬉しいなと。

ちなみに、この日の全日程が終了した後、今度は中国人とナイジェリア人のコンビがやって来て、アフリカでのモバイルテクノロジーに対する投資について、アグレッシブな宣伝を受けました。すごい可能性があると思います!是非機会があれば一緒に仕事をしましょう!とのこと。夢がキラキラしてるなと。

外に出ると 1月とはいえ青空のもと、スケボーしたりバスケしたりするスタンフォードの学生たち。羨まし過ぎるなと。

それもこれもがシリコンバレーです!

(各発言の内容については、私の聞取能力の問題等により微妙な相違がある可能性が否定できません。予めご容赦いただければと思います。)

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