「シリーズA」を定義する? (2)

前回の続きで、「各ラウンドで調達した資金で何をどこまでやるべきか?」ということを考えてみます。前回までの到達点は、

シリーズAとは、企業が直面する第1回の(外部からの)大規模な資金調達ラウンドのことで、歴史的に「シリーズA」という名称のPreferred Stockを発行することが(米国で)多かったことからこのように呼ばれている

という感じでした(MVPならぬMVT=Minimum Viable 定義ということで、若干の不正確はご容赦ください笑)。

今回は、更にこれに実質的な視点を持ち込んでみます。すなわち、Seed Moneyで至るべき到達点、Series A Moneyで至るべき到達点」はどんなものなのか??を探してみます。

例えばこちら。Twitterに対するExitを経験している起業家のEladさんが2011年に書いたブログでは、

・『製品をスケールさせて、ビジネスモデルを確立する』のがシリーズAで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-$15Mくらいを調達する。

・『ビジネス自体をスケールさせる』のがシリーズBで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-数十Mくらいを調達する。

・『成長を加速させ、ビジネスを国際化し、M&Aで他の企業を買ったりする』のがシリーズCで調達した資金を用いてやるべきことであり、数十~数百Mを調達する。

なんてことを仰っています。これ、2015年でも同じニュアンスなのでしょうか。

今回ご紹介したいのは、著名エンジェル投資家のJason Calacanisさんのブログです。1970年生まれのJasonさんはNetscapeなどドットコム・バブルを牽引したインターネット関連企業を経たあと、超名門ベンチャーキャピタルであるSequoia Capitalなどを経て、2009年からOpen Angel Forumというエンジェル投資家と起業家を結びつけるフォーラムなどを主宰しています。その投資先も、Tumblr、Uber、Evernoteなど著名企業が含まれている、影響力のあるエンジェル投資家の一人ですね。そのJasonさんは、

・時代によってそれぞれのラウンドで調達する資金を使ってやるべきことは変わってきている。

・それぞれのラウンドで調達できる額が大きくなってきている反面、やるべきことが前倒しで要求されるようになった。

・特に、以前であればSeries A/Bでやるべきことと考えられていたことが、リーン・スタートアップの普及により、かなり初期の段階で実践しておくべき事柄に変わりつつある。

ということを仰っています。以下の図1をご覧下さい。Jasonさんの仰っているこのモデル、シリコンバレーのVCさんの間ではかなり共通認識に近いものがあるようです。

series-a-definition

 図1 各ラウンドで調達した資金でやるべきこと(2015年版:Jason Calcanisさんのブログを基に作成)

リーン・スタートアップについては私は専門家ではありませんし、巷間優れた書籍やブログがあるのでそちらを見て戴いた方がいいのですが、特にPre-fundingの段階でMVP(Minimum Viable Product。エリック・リースの原著では “The MVP is that version of the product that enables a full turn of the Build-Measure-Learn loop with a minimum amount of effort and the least amount of development time.”とされていますが(Eric Ries, The Lean Startup, at 77 (Crown Publishing 2011))、邦訳では「実用最小限の製品」と訳されているようです。)まで作れ、と考えられているという部分はなかなかのインパクトがありますよね。

こうやって考えてみると、以前のポストで書いた「シード段階でのバリュエーションが上がり過ぎている?」という話も、昔だったらシリーズAあたりでついたはずのバリュエーションがシード段階で付いているだけ?と考えると、納得の行く話でもあります。勿論VCからみると、ビジネスとして投資をスケールさせるのが難しくなっていくのに変わりは無いため、善し悪しだとは思うのですが。

というわけで長々とお話してきましたが、このJasonさんの考えを取り入れ、2015年版シリーズAを定義しますと、

(1) 企業が直面する第1回の大規模な(外部からの)資金調達ラウンドであって、

(2) ローンチされたMVPをスケールさせるために用いる資金を調達するものであり、

(3) その対価として、歴史的に、「シリーズA」という名称のPreferred Stockを発行することが(米国で)多かったことから、こう呼ばれているもの

ということになりそうです(これは最新過ぎる、ということであれば、(2)を「ローンチされたMVPに牽引力を持たせ、スケールさせるために用いる資金を調達するものであり」に変えてみるといいのかな?)。

もちろん以上の議論はアメリカのものであって、日本のスタートアップにそのまま持ち込まれる話ではありません。ただ、日本のVCの活動にもシリコンバレーのVCの考え方は一定程度影響を及ぼすと思いますので、近い将来、同じようなことが日本で言われることもあるかもしれませんね(個人的には、勿論シリコンバレー流を参考にすべきは参考にし、しかし日本の文化に合わないものは無理して取り入れるべきではない、と思っていますが。)。JasonさんのブログはStartup界隈のお話がとても面白く語られているので、もしご興味がありましたらまた読んでみてください。

珍しく宿題を一つ片付け、肩の荷が下りた気分でございます… さぁ2月も中盤戦!今週も頑張って参りましょう!

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