アメリカでCorporation形態で会社を設立しようとした場合、次に考えなければならないのは、
どの州でCorporationを設立するか
という点です。
アメリカでは、アメリカ合衆国憲法で連邦レベルで定めるべしとされている事項以外の事項は、基本的に州の法律に立法が委ねられており、会社関係の法律もしっかりと州法に委ねられています。
そのため、Corporationも州ごとの立法に基づいて設立され、例えば、デラウェアで設立された会社はDelaware corporation、カリフォルニアで設立された会社はCalifornia corporationと言ったりします。
さて、私が勤務しているWSGRはカリフォルニア州にありますので、日本の方からアメリカでの会社設立の相談を受ける場合、基本的には、California corporationかそれともDelaware corporationかという相談を受けることになります。
そして、この相談に対するアドバイスは、
①スタートアップ等で、将来、アメリカでの資金調達を考えているのであれば、Delaware corporation
逆に、
②特にアメリカでの資金調達を考えておらず、純粋な現地子会社に過ぎないのであれば、California corporation(または、現地子会社を設けようとしている州のcorporation)
ということになります。
では、①スタートアップ等で、将来アメリカでの資金調達を考えている場合には、なぜDelaware corporationがベストなのでしょうか。
答えはいくつかあるのですが、もっとも重要なのは、
VCを初めとする投資家が、Delaware corporationの実務に慣れているから(もっと言えば、他の州のCorporationについては、正直良くわかっていないから)
ということになります。
めちゃくちゃ投資家目線ですが、お金を入れてくれるのは投資家なんですから、これは仕方のないことです。
中には、Delaware corporation以外のcorporationであっても投資してくれるところもありますが、多くの場合、投資段階でCalifornia corporation からDelaware corporationへの鞍替えを求められます。運良く鞍替えしないまま投資を受け、事業を発展させることができても、いざIPOの段階になって、引受証券会社がDelaware corporationへの鞍替えを求めてくることも多いようです。
California corporationからDelaware corporationへの鞍替え自体は、デラウェアに100%子会社を作ってぶら下げて、その子会社(Delaware)と親会社(California)との間で逆さ合併するといった、僕がNYU留学時代に、偉大なるProf. John Slain(なぜ偉大なのかは、一部の友人が知っています。)から教わった方法そのまんまの方法が用いられるのが通常な訳なのですが、もちろん弁護士報酬もかかりますし、ある程度育ってしまった会社ですと、この逆さ合併が色々な契約のChange of Control条項にヒットすることになり、やれ通知だ、やれ同意の取得だ等々、大変メンドクサイ事務手続が目白押しなわけです。
なので、そもそもアメリカで資金調達を考えているのであれば、将来そんな煩わしいことに巻き込まれるよりも、最初からDelaware corporationで設立してしまおう、というのが合理的な考え方になる訳ですね。
他にも、Delaware corporationを選ぶメリットとして、教科書的には、
会社法を専門に扱っている裁判所があり、迅速で判例も多いので、予測可能生が高い
ですとか、
デラウェア裁判所は、きちんとやるべきことをやっていればDirectorsのビジネス判断を尊重してくれる傾向にある
といった理由が挙げられるのですが、スタートアップのメッカであるここシリコンバレーで実務をしていると、やはり一番大きな理由は、「投資家目線」なんだろうなと感じるところです。
長くなってしまったので、続きはまた今度ということで。
シリコンバレーは、2ヶ月ぶりの大雨に見舞われていますが、今週もがんばっていきましょう。