優先株

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日本で「優先株」というと、会社が配当をする際、普通の株を持っている人より受け取ることの出来る配当金額の多い株を指す場合が多いと思います。

例えば、ここシリコンバレーでも大活躍の伊藤園さんの開示情報を見てみましょう。

(伊藤園さんは英語で書くとITOEN、「IT応援」ですね!Evernoteは勿論、Facebookなど様々なシリコンバレーの企業や小売店で伊藤園さんのお茶は大変親しまれています。よく知られているお話ですが、その営業の道筋は本当に頭が下がる思いです。)。

伊藤園さんが2007年に上場した優先株は、普通株の配当に対して125%の配当金を受け取ることができる、というように設計されています。

sannkoushorui(平成26年7月24日開催の株式会社伊藤園第49回定時株主総会参考書類より)

つまり、ある年の伊藤園さんの普通株主が保有する株式一株に対し100円の配当金が支払われる場合、優先株を保有していると125円の配当金を受け取ることができることになります(ちなみに原則として議決権(株主総会で株主として決議に参加する権利)は認められないように設計されています。この辺りについてはいずれまた。)。

このように、日本では、「優先株」とは配当(厳密には残余財産の分配、すなわち会社の清算時に債権者に対する支払いが終わった後の財産の分配の場面もカバーするのですが)のときに有利な株、という語感があります。

これに対し、アメリカで「優先株」の翻訳元?と思われる「Preferred Stock」と言ったとき、少し事情が違います。Preferred Stockは、どちらかというと日本語で言うところの「種類株」のニュアンスに近いのです。

こちらのVCの投資でもCBやCNではなく株式に対して出資する場合には、特にシードラウンドやシリーズAなどのアーリーステージの場合、Preferred Stockが用いられる場合が多くなっています(というか、イメージとしては普通株のケースが少ない、という感じでしょうか。)。

(注:日本ではVCがアーリーステージのStartupに普通株で出資することもまだまだあるようです。追って状況を纏めてみます。1月17日追記。)

その内容は正に千差万別。M&AというEXITを迎えることになった場合に当該優先株主であるVCが賛成するのであれば、例え少数株主が反対してもそれを承認できるように設計されていたり、次の資金調達ラウンドにおけるバリュエーションを加味して更に株を買い増すことができるようになっていたり。

正に日本では種類株式として設計するものですが、アメリカでは「普通株=Common Stock」に「優先=Preferred」する権利、と呼ばれているというわけでした。ちなみにpreferred stockはそれぞれ正にtaylor madeな内容となっていますが、それだけにStartup側から見るとかなり制約の強いものも作ることができるというのも事実。ですから、こちらのStartupは日本と異なり、かなり初期の段階から出資を受け入れるフェーズでは弁護士をきちんと使うことが多いです。

最初アメリカに来てこちらの投資家の方のお話を聞いていたとき、優先株がどうしたこうしたという話になり、どうも違和感があったことが思い出されます。というのも、スタートアップは配当なんか一般的には(ほとんど)しませんよね。事業拡大に向けて資金は常に必要ですし、配当を期待しているVCやエンジェル(特に第1回の大きな資金調達であるシリーズAまでの、正に初期段階の活動資金を個人で出資する方)は聞いたことがありません。そのため、「なんで優先株なんか欲しいんだろうなぁ」と思っていたのですが、それは大きな勘違い。その内容は日本の「優先株」と必ずしも同じではなかったのでした。

皆様、あと一日で週末です!明日も頑張りましょう!

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