ドローンとは、小型無人飛行機のことで、筆者も実物は見たことがありませんが、こんな感じのもののことです。
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(AmazonのPrime Air)
(個人用人気商品)
さて、2月15日(日)、FAA(Federal Aviation Agency 連邦航空局)は、新しいドローン規制の骨格を公表し、ドローンの商業利用に関する新ルール作りが正式にスタートしました。
2ページにまとまったサマリー版はコチラ。
概要は以下のとおり(例によりざっくり意訳、ご海容下さい):
1 運航に関するルール
(1) 対象は55ポンド以下のドローン
(2) 視認運航(VLOS; Visual Line-of-Sight)のみOK
要するに、安全上の理由から、常にドローンを近くで視認できる状態でしか運航させてはいけない
(双眼鏡等に頼らないと視認できないのであればNG)。
視認者は、オペレータ以外の視認観測者(visual observer)でもよい。
(3) 運航関与者以外の人間の上を運航してはいけない
(4) 運航は日の出から日没までに限る
(5) 最高時速は100マイル、最高運航高さは500フィート
(6) オペレータ・視認観測者は同時に2機のドローンを担当してはいけない。
(7) オペレータに運航前の検査義務
(8) オペレータの一定の知識を条件に、運航関与者以外の上を運航できる、マイクロドローンのオプションも検討
2 オペレータ等に関するルール ~ オペレータがドローンを運航するための条件等
(1) 知識テストに合格する
(2) TSA(Transportation Security Administration米国運輸保管局)の認可
(3) ドローンオペレータ免許の取得(無期限)
(4) 知識テストは2年ごとに合格しなければならない。
(5) 17歳以上
(6) 要請があれば、FAAにドローンを調査・テストのために提供しなければならない。一定の記録の保管義務もあり。
(7) 事故があれば10日以内にFAAに報告。
(8) 運航前検査義務
3 ドローンに関するルール
(1) 耐空証明は不要
(2) ドローン登録は必要
ざっと報道状況をみてみると、USA Todayが「ドローンルール案、慎重にバランスを取る」と題して、一言でいうと、若干遅きに失した感はあるが、安全上の配慮も必要なのだし、新ルール案の内容は悪くないぞという論調、NY Timesが、ドローンが既に軍事・警察捜査的な用途で成果を上げていること、プライバシーの問題があること、違反者の摘発等のエンフォースメントは実際大変だろう(タレこみがないと端緒を得られないのではないかなど)ということ、などに触れつつも、新しいテクノロジーに関するものとしては、今回のルール案は、分別のあるスタートだとまとめています。比較的好意的です。
反対意見を代弁しているのはCNBCのニュースサイト(「農業経営者、ドローン新ルール案に失望」 行方不明の家畜探索や畑内のトラブル監視等への利用を望んでいる農業関係者からは、視認運航(VLOS)と、500フィートまでという高さ制限が大きな制約になるということのようです)と、Reuters(「ロビイスト、FAAの新ルール案に照準」 要するに、アマゾンやグーグルを筆頭とした企業が、新ルール案は厳しすぎるということで、本格的なロビイングを展開するだろうとの内容です。彼らは安全性の問題は新技術で対応可能だということで、新技術によるFAA説得の図式を予想しています。)
いちばん好意的だと思われたのがForbesで、「商用ドローン規制――予想より業界寄りの内容で、ドローン支持者揃って安堵」という見出しで、新ルール案は、思ったよりガチガチじゃなくてよかったという複数の業界関係者の声を報じています。耐空証明不要、パイロットトレーニング不要といった点は、ドローン業界では評価が高かったことが分かります。
CBSニュースサイトは、一説によるとドローン産業の規模は年間1億ドル、あるいは2025年までに820億ドルに達するであろうこと、既に事故その他のリスク事象が結構たくさん発生していて(高度9000フィートに達した個人用ドローンがいたとか、今年になって既にリスク報告事象が60件出てるとか)FAAは安全上の問題を深刻にとらえていること、携帯電話基地局・橋の検査等、そしてやはりまずは農業関連でドローンは活躍するだろうこと、などを淡々と報道しています。
このように立場によっていろいろな受け止められ方をしていることは、ドローンがかなり広くいろいろな業界で活躍するポテンシャルを秘めていることのあらわれかもしれません。上に書いたののほかに、ハイテク、航空機はもちろん、不動産仲介・管理、電力・エネルギー、映画や写真関連、大学等が、ドローン規制への高い関心を持っていると思われます。
また、賛否は措くにせよ、現在、アメリカでは、ドローンの商用利用は「原則禁止」で、例外適用申請をして、承認されるかはケースバイケースで予測が難しいし、承認されたとしても数か月単位の時間がかかる…というのが実情ということで、そのような現状を踏まえると、今回の新ルール案、やはり大きな一歩として記録されるものだといえそうです。
何はともあれ、新ルール作りは、まだまだ始まったばかり。60日のパブリックコメントの受付けを経て、正式な法案又はルールになるには最低でも2年弱、おそらく2017年になるまでは待たなければならないというのが大筋の見方のようです。
ルールの内容は今後大きく変わる可能性も大いにあります。視認運航(VLOS)は何となく外されないだろうという気がしますので、具体的にはAmazon Prime Airのような荷物運送的なビジネスについて、別の規制フレームワークができるかどうか、都市部と非都市部で規制を変えるか、などがポイントかもしれません。
バックトゥーザフューチャーPart2の未来舞台にあたる2015年、まだ空飛ぶ車はないですが、ドローンが行き交う風景が現実となる日は近そうです。近い将来には、マンションの各家庭のベランダに宅急便受付用ドローン・デッキが設置されたり、子供の通学路の上空でドローンがモニタリングをしたりすることになるのかもしれません。
なお、今、最もドローンに近いところにいる日本人の一人であり、本ウェブサイトの共同筆者である小川選手から、VCの現場での声や、ドローンのポテンシャルについて、ひょっとしたら別の記事の投稿があるかもしれません(し、ないかもしれません)。
この新ルール案と同日にホワイトハウスから発表された、政府機関によるドローン利用に関わるプライバシーに関するメモランダムも興味深いし、早速議論を呼んでいますが、このメモランダムに関しておそらく今回ビジネス側として重要なのは、ドローンの商業活用に伴うプライバシー侵害に関するルール作り作業を大統領がNTIA(National Telecommunication & Information Administration)という政府機関に投げたという点ではないかと思います。ここでも、上で述べたFAAのルール作りと同様、激しいロビイング活動が行われるのだと推測されます。
あとプライバシーに関して言及すべきは、昨年10月、カリフォルニア州で、ドローン使用による写真撮影や音声記録によるプライバシー侵害行為を想定した法改正がなされていることでしょうか。物理的な不法侵入を伴わずに「any device」(*これがドローンを含むというのが改正のポイント)を用いてプライバシー侵害行為を行ったら、通常および特別損害の3倍賠償義務を負うとのこと。アメリカでたまに見かける3倍ルールです。
ついでに言いますと、この州法改正前に、州政府機関がドローンを使用する際には(おそらく常に)令状を要するという同州法案が、知事の拒否権発動によってお蔵入りとなっています。確かにさすがに常に令状ということなら行き過ぎな気がしますが、これに限らず、カリフォルニア州法の動きは大体何でも早く、面白いです。
個人用ドローン、めっちゃ欲しいです。