シリコンバレーでは毎日のようにMeetup(異業種の方々やVCとファウンダー、はたまたエンジニアの方同士など、一定の目的を持って人が集まる交流会のようなもの)が実施されていますが、その話題を追ってみると、いまシリコンバレーで流行っているものや、スマートフォンの次に世界を変えるモノはなんなのか、というテーマについて一定の対象が見えてきます。
分かりやすくシリコンバレーで現在隆盛を誇っているのは、例えばスマートフォン・アプリの開発やSNSなど、ソフト系のIT技術です。たしかにiPhoneを初めとするスマートフォンの登場は私たちの生活を一変させました。
方向音痴の私の家族でも目的地にあっさりと到着することができるようになりましたし、仕掛かり中のドキュメントをクラウド上に置いておき、ちょっとした移動時間にデバイス上で確認するようなことも日常の姿となりました。インターネットに接続するデバイスとしては最早PCよりもスマートフォン(やタブレット)が主、という方も多いと思います。
このスマートフォンの普及は、電波法など広い意味での通信機器プロパーの法律を除けば、それ自体によって大きな影響を受ける法務はそう多くなかったかもしれません。
しかし、いまGoogleや各自動車メーカーが開発合戦を繰り広げている自動走行の自動車などではどうでしょうか。カリフォルニア州では最近、DMV(日本の陸運局と免許発行主体である公安委員会の機能が合体したような、各州にある行政機関)が「自動走行の運転免許証」(以下「自動免許証」といいます。)を発行するようになりましたが、その発行枚数と被交付者が一部の業界で話題になっています。
(近所の道を走行するGoogle self-driving car(撮影私)。この道をまっすぐ行くとGoogleキャンパスがあります。ボディ上の煙突のようなものが結構なスピードでクルクル回っています。)
(参考記事)
この記事では2014年9月時点において、Googleに対し25枚、アウディとメルセデスに対して2枚の自動免許証が交付された、と報道されています。しかし、シリコンバレー界隈の噂では、既にGoogleの取得した自動免許数は100枚を超え、発行枚数で2位に付けているのは著名企業家のイーロン・マスク率いるTesla Motorsで10数枚、アウディやメルセデスはこれに続くも10枚程度とも言われており、トヨタや日産など日本が誇る自動車メーカーの名前がなかなか聞こえてきません(とか言いながらGoogleのこの試験車はトヨタ製ですが笑)。
勿論日本の自動車メーカー(アメリカに住んでいると、その品質の安定感・安心感はやはり特筆すべきものがあります。)も手をこまねいて見ているはずはないので、基礎的な技術の特許権による確保や海外メーカーとのアライアンスなど、様々な対応策を打っているものと推察されますが、それにしても驚くのはGoogleの本腰の入れ方です。
事実、私が住んでいるMountain View(Googleのお膝元)では、日常の風景として、上の写真のようなGoogleのself-drive車の試験走行に出会います。ある自動車メーカーの方に教えて戴いたのですが、自動走行には地図が必須であり、Google Mapを有するGoogleは一日の長があるとのこと。その方の考えでは、2,3年のうちに、少なくとも高速道路と駐車の場面では、自動走行をする車両が現実に出始めるだろうとのことでした。
では、そんな自動走行車が走り回り、自動車の中では家族でトランプをしていれば目的地に到達するような時代、「保険」はどうなるのでしょうか。言い換えますと、自動走行中の車が不幸にも事故を起こしてしまった場合、その損害は誰がどのように負担すべきなのでしょうか。
まず考えられるのは、
「やはり事故を起こした以上は車の運行供与者が責任を負うべき」
という考え方です。この形であれば、自動走行が当たり前になる未来でも、自動車保険の基本的な構造は変わらない可能性が高いと言えそうです(自動走行は人間が運転するよりよっぽど安全、と言われているため、この形だと自動走行機能は保険料が下がる一要因として捉えられるようになるかもしれません。)。
しかし、感情的には、
「車の機能として自動走行が謳われ、それを信頼して利用しただけであり、事故は(運転席に座っていただけの)私に責任(過失)のあるものではない」
という考え方にも一定の説得力がありそうです(そもそも完全自動走行車に運転席があるのかよく分かりませんが…。コンセプトモックでは車内の丸テーブルを囲むようなモノが目立ちます笑)。
この言い分に則った場合、損害保険は誰がどのように加入すべきものになるでしょうか。自動車メーカーや自動運転の機能を開発した会社が保険に加入する、という構成が一番分かりやすくはありますが、事故が起きたらすべて自動車メーカーや機能開発者の責任、ということになっては著しく開発の意欲が削がれますし、極論すれば自動運転の開発を止めよ、という法制上のメッセージにもなりかねません。
このような観点から、個人的には、少なくともイノベーションを重視するカリフォルニア州(後日詳述しますが、UberやAirbnbなどのビジネスモデルが後追い的に認められたことに、端的にこの姿勢が現れていると感じられます。)、ひいてはアメリカで、この考え方がそのまま採用される可能性は高くないのかな、と思います。
勿論、我が国では、人身事故については自賠法がありますから、既存の枠組みでも加害者側がその責任を免れることにはならない可能性がありますが、保険の在り方という議論は自賠法とは区別して考えることができますし、場合によっては(保険法のみならず)自賠法の規定自体にも一定の修正が必要になってくる可能性もあるでしょう。
自動走行の仕組みなどにも拘わる議論だと思いますので、保険や損害の負担に関する法制の在り方は今後技術進歩と共に検討が進んでいくものであり、現時点で答えが出るものではありません。ただ、一つ保険という視点から見ても、技術革新がその周辺領域の古い常識を打ち破る可能性があることが分かります。
ここシリコンバレーでは毎日のように、より便利で、より豊かな生活が実現される未来について議論が交わされています。それぞれの技術が実現した場合に、どのような法制が必要となり、どのような手当てが必要となるのか。それを考えてみることもシリコンバレーでの楽しみの一つです。シリコンバレーでは毎日のようにMeetup(異業種の方々やVCとファウンダー、はたまたエンジニアの方同士など、一定の目的を持って人が集まる交流会のようなもの)が実施されていますが、その話題を追ってみると、いまシリコンバレーで流行っているものや、スマートフォンの次に世界を変えるモノはなんなのか、というテーマについて一定の対象が見えてきます。
分かりやすくシリコンバレーで現在隆盛を誇っているのは、例えばスマートフォン・アプリの開発やSNSなど、ソフト系のIT技術です。たしかにiPhoneを初めとするスマートフォンの登場は私たちの生活を一変させました。
方向音痴の私の家族でも目的地にあっさりと到着することができるようになりましたし、仕掛かり中のドキュメントをクラウド上に置いておき、ちょっとした移動時間にデバイス上で確認するようなことも日常の姿となりました。インターネットに接続するデバイスとしては最早PCよりもスマートフォン(やタブレット)が主、という方も多いと思います。
このスマートフォンの普及は、電波法など広い意味での通信機器プロパーの法律を除けば、それ自体によって大きな影響を受ける法務はそう多くなかったかもしれません。
しかし、いまGoogleや各自動車メーカーが開発合戦を繰り広げている自動走行の自動車などではどうでしょうか。カリフォルニア州では最近、DMV(日本の陸運局と免許発行主体である公安委員会の機能が合体したような、各州にある行政機関)が「自動走行の運転免許証」(以下「自動免許証」といいます。)を発行するようになりましたが、その発行枚数と被交付者が一部の業界で話題になっています。