Uberに対抗? Googleの自動運転の配車サービスの特許

Takashi Nakatsuka Blog Leave a Comment

先月、自動運転についての記事が波多江隊員から投稿されました。日本に戻ってきて実感することは、シリコンバレーの自動運転に向けてのスピード感はすごかったなと。そして日本はこのままで大丈夫なのかなと。ご存知の方も多いように、Uberも自動運転に取り組んでいます。近い将来、アプリでUberの車を手配すれば、自動運転の車が迎えに来てくれ、目的地まで連れて行ってくれる、そんな社会になると思うとワクワクするのは自分だけではないはずです。

さて、そんな中、Googleが自動運転カーの配車サービスの特許を申請していることがわかりました。Uberに対抗できる面白い特許です。今回はこれを紹介いたします。

なお、以下の動画はGoogleが進めている自動運転カーについて説明したものです。今回の特許とは直接の関係はないです。

まず、一般的な配車サービスの流れは、①ユーザーがスマホ等で迎車をリクエストする、②その際、ユーザーは迎車地・目的地を指定する、③指定した迎車地に車が迎えに来る、④指定した目的地に車が連れて行く、というものです。

Googleの特許では、この一般的な配車サービスを自動運転車で行う際に、自動運転車ならではの問題を解決しようとしています。具体的には、ユーザーが指定した迎車地・目的地が、例えば道路工事中の地点など、自動運転車がアクセスできないような地点だった場合、別の近い迎車地・目的地をユーザーに提案する、としています。

ドライバーがいる場合には、ドライバーや乗客が車停止予定地点の状況を判断し、その状況によっては少し離れた地点に車を停めることが可能です。しかし、ドライバーレスの場合、「この辺で停めてください!」などと言う相手がいません。したがって、ドライバーレスの場合、ドライバーがいるときと同じようにどうやって車停止地点の融通を利かせるか、というのが課題となります。と、まあ、さらっと書きましたが、実はこの課題に気付くこと自体が凄いことなんです。

Googleの特許は、まさにドライバーレスカーならではの配車サービスの問題点に取り組み、必要に応じて、別の近い迎車地・目的地を乗客に提案する、としています。

では、特許の図面を用いて具体例を見てましょう。

以下の図(アプリの画面)で、小さい〇は、ドライバーレスカーが乗客をピックアップ又はドロップオフできる地点を示しています。ユーザーが指定した迎車地点(扇形のマーカー810)がこの小さい〇のどこかでしたら、そこに自動運転の車が迎えに来てくれます。一方、上図に示すように、指定された迎車地点(扇形のマーカー)小さい〇のどの地点にもない場合、自動運転の車はその指定された迎車地点ではユーザーをピックアップできない(ピックアップするのに安全でない)、と判断されます。そして、そこから徒歩圏内(扇形のマーカーを中心に描かれたサークル内)のピックアップ可能な地点が探索されます。このピックアップ可能な地点が黒い●で表されています。そして、迎車地点として黒い●の地点がユーザーに提案されます。単純な仕組みですよね。

上図の例では、黒い●が8個あるため、迎車地点として8個の候補地が提案されます。

でも、提案される候補地の数が多いと、それはそれでユーザーとしては有難迷惑ですよね。Googleはちゃんと考えています。提案する候補地は、リクエストされた迎車地点に近いところの3つにしてもいいよ、と特許に記載されています。以下の図では黒い●(ピックアップ可能な地点)が3つになっています。

また必ずしも、ユーザーとしては、提案される候補地は指定した迎車地・目的地に近ければいい、というものでもないですよね。例えば、大きな道路を渡らないといけなかったり、丘の上まで坂を登らないといけなかったりすると、近くても歩くのが大変です。もちろん、Googleはこのこともちゃんと考えています。候補地をスコアリングし、スコアの高いものだけを提案してもよい、と特許に記載されています。以下の図では、スコアが高い二か所が提案されたことを示しています。そして、この例では、左側の黒●1120が右側の黒●1122よりも低いスコアになっています。左側の黒●の方が扇形のマーカー1130(指定した目的地)に近いにも関わらずです。ちゃんと理由があります。これは、右側の黒●の地点は扇形のマーカー1130(指定した目的地)と道路の同じ側にあるのに対し、左側の黒●の地点は道路の反対側にあってユーザーに道路を渡らせることになるからです。なるほどー、感心させられます。

このようなスコアリングには、順位付けするための基準があります。この特許では、車に関する要因と、ユーザーに関する要因の二つがあると説明されています。例えば、車に関する要因としては、候補地に行くのにUターンが必要か、候補地が一時通行止めか、候補地が停車待ちできる場所か、などです。

The scoring may be based on various factors that quantify the ease and/or difficulty of reaching the predetermined location by one or both of an autonomous vehicle and the user. Factors related to an autonomous vehicle may include, for example, the location of any autonomous vehicles available to pick up the user (if a pickup location), whether the vehicle would have to first pass the location (on the opposite side of the street) and turn around, whether the autonomous vehicle can currently reach the predetermined location (because access is temporarily prevented due to traffic or construction conditions), the availability of parking or places to pull over and wait at the predetermined location, as well as any other such factors. Factors related to the user may include, for example, the distance from the received location to the predetermined location, the availability and size of sidewalks, the presence and grade of hills, the number and size of roads that would need to be crossed from the received location to the predetermined location, or any other characteristics of roads that would affect the ease of walking to the suggested location. In one instance, each factor may be individually scored for a given predetermined location and the scores summed to provide an overall score for that given predetermined location. [0066](下線追加)

自動運転の車が乗客をピックアップ・ドロップオフできる地点(上図の小さい〇)は予め決められているのですが、ではそもそもどうやって決められているのでしょうか。特許の説明によると、マニュアル選択の場合と、各種ソースからリアルタイムで収集した情報の解析を通じて各地点の特性(サイズ、形、パーキング、法律など)に基づいて特定する場合との二つがあるとのことです。なお、リアルタイムで収集する情報は、道路、建物、工事エリア、現在の交通状況などの情報とのことです。

The predetermined locations may be manually selected or identified based on characteristics of such locations (sizes, shapes, parking and other laws, etc.) and, in some cases, manually verified. These predetermined locations may thus include reasonable locations where a vehicle could stop selected manually or through some analysis of the characteristics of each location. [0047](下線追加)

The detailed map information may include information about roads, buildings, elevations, fire hydrants, construction zones, real time traffic conditions, etc. from various sources such as governmental institutions, paid informational services, manually entered information, information gathered and provided in real time by autonomous vehicles, etc. [0023](下線追加)

ここで取り上げたGoogleの特許は、2015年6月22日に米国で出願され、昨年2016年12月22日に出願公開されました。まだ特許としては成立していません。審査はすでに進められており、これまでに2回のOffice Action(拒絶理由通知書)が出されています。2回目のOffice Actionでは、特許出願(すべてのクレーム)は複数の文献から自明であると指摘されています。

Googleは、これと同じ特許を海外でも権利化を目指すために、2016年6月6日に国際出願(PCT出願)を行っています。現時点では、まだ国際出願をどの国にも(日本にも)移行していないです。なお、日本への移行期限は2018年1月22日(米国出願日から30か月)です。

今回はここまで。いかがでしたでしょうか。このGoogleの特許がもし成立すれば、けっこういい特許(コンペティターに対して良い文句が言える特許)になりそうですよね。

ちなみに、一昨日の2月23日に、Googleは、UberがGoogleの自動運転車の営業秘密を盗み、また、Googleの自動運転車の特許を侵害したとして、Uberを訴えました。訴状のリンクはこちらです。ニュース記事のリンクはこちらです。他人事ですが、ワクワクします。

ではまた~。

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